アンナ・クーポー(ナナ) |
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本作の主人公。『居酒屋』のジェルヴェーズの娘である。『居酒屋』では両親を相手にまわして反抗の限りを尽くしたナナだが、本作でも口の悪さは相変わらず。その磊落な性格と肉体的魅力が相まって、類い希な個性を醸し出している。しかし、情にもろいため男に食い物にされる側面もあり、華々しい成功と悲惨な生活との間を行き来する。 |
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ボルドナーヴ |
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ヴァリエテ座支配人。なぜか自分の劇場を褒められることが嫌いで、劇場を「わしの淫売屋」と呼ぶことにこだわる。体格が大きく、女優たちをしじゅう怒鳴りつけている豪傑漢だが、不思議と憎めない性格の男である。 |
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ローズ・ミニョン |
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ヴァリエテ座の女優で、ナナのライバル。女優としてライバルなだけでなく、貴族のパトロン(情夫)を獲得する上でもしばしばナナと対立する。ヴァリエテ座の「かわいい公爵夫人」のヒロイン役をナナに奪われて激昂するが、結局はナナに仲間意識を持っていたようで、ナナの最期に同情して看取る。 |
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ゾエ |
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ナナの小間使い。ゾラの描く小間使いにはけっこう個性的な人物が多いが、ゾエもその一人であろう。ナナにひたすら堅実に仕えて金を貯めた後、独立して娼館をひらくために暇をとる。これといった重要なエピソードはないが、要所要所で、カギとなるような機転のきいた振る舞いを見せる。 |
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サタン |
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ナナの寄宿学校時代の旧友。街娼。娼婦の実態に通じており、ナナのフォンタンとの同棲時代に、警察の取締りや上流階級の変わった性的趣味(SM)についての知識をナナに伝授するほか、のちにミュファー伯爵がナナに与えた屋敷に同居し、ナナを同性愛にひきこむ。その後のいきさつはやや不明であるが、どうも死んでしまったらしい。 |
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フォンタン |
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ヴァリエテ座の男優で、ナナの愛人となる。ナナと同棲するようになってからはつけ上がり、殴る蹴るの暴力を加え、しまいには別の女を連れ込んでナナを追い出してしまう。もともとはナナがフォンタンにぞっこんになったのであったが、殴られてもフォンタンを好きだとナナは言う。両親に殴られて育ったナナが暴力を好むはずはないので、ここは分析意欲をおおいにそそるところである。 |
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ダグネ |
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もとナナの愛人だった、打算的な男。上流階級と下層階級の間を行き来しながら自己の立身出世をはかる。サビーヌにうまく取り入って娘のエステルと結婚。ナナを通じてミュファー伯爵を懐柔してもらい、その代償に結婚初夜を抜けだしてナナに捧げにくる約束を交わすなど、いかにもあくどい。 |
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ルラ夫人 |
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『居酒屋』に続いて再登場のナナの伯母。ルイ坊やの面倒をみるなどナナをサポートする。小さないざこざはあっても、ナナとはそれなりにうまくやっているらしい。しかし『居酒屋』『ナナ』という「パリの女おちぶれ二部作」(と私が勝手に命名)の両方に登場し、周囲の人物がばたばたと死んでいくなかでこの人だけは卑猥な冗談を言い続けながら最後まで生きのびる。しぶとい。 |
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ルイ坊や |
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ナナの子ども。ナナが16歳のときに生んだとされており、父親は不明。はじめ田舎の村の乳母に預けられ、のちにナナが引き取ってルラ夫人が面倒を見ることになる。ナナは可愛がっていたようであるが、自分で育てることはせず、やがて天然痘にかかってあっさりと死んでしまう(享年3歳)。もはや、可哀想とかいう以前の問題であろう。第五世代ルイの死で、マッカール家の系譜はひとつの袋小路に陥る。 |
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