ジェルヴェーズ・マッカール |
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本作の主人公。性格は特に個性的なわけではなく、ごく典型的な庶民の女である。こういう普通の女が必然的に破滅していく様子を描いているから『居酒屋』はおそるべき作品なのである。ヴィルジニーとの喧嘩に勝った場面はものすごく格好よかったのだけれど、零落してからの惨めさは見るにしのびない。 |
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オーギュスト・ランチエ |
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ジェルヴェーズの破滅の直接の原因はこいつである。自分は働かずに女の稼ぎを食いつぶし、破滅が近くなると他の女に乗りかえるという貧民街の渡り鳥。アデライードの血は引いていないはずであるが、ある意味「マッカール的なもの」の見事な体現者である。 |
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クーポー |
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ジェルヴェーズの夫。怪我で療養中に怠惰の味を覚え、ジェルヴェーズの生活を破壊する加害者と化す。しかしもともと真面目な労働者だったことを思えば、この人もパリに破滅させられた被害者なのかもしれない。しかしランチエが直接暴力を振るわないのに対してクーポーは妻子をびしびし殴るので、印象は悪い。ジェルヴェーズと同じく、死に方はきわめて悲惨。 |
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アンナ・クーポー(通称ナナ) |
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クーポーとの間にできたジェルヴェーズの末娘。14歳そこそこで家出して娼婦になってしまう。しかし、酔っぱらった父母から理由もなくびしびし殴られ、お気に入りのリボンを取り上げられて質に入れられたり、母の愛人ランチエから性の知識を吹き込まれたりしていれば、家出しないほうが不思議というものであろう。彼女のその後の生活と悲惨な末期は第9巻『ナナ』に詳しい。 |
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グージェ |
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母と二人で暮らす真面目な鍛冶工。新聞の切り抜きを部屋の中に貼り付けるのが趣味。ユーラリーとならび、この大作のなかでただ二人(!)の有徳な人物のひとりで、ジェルヴェーズに想いを寄せている。気の毒な人物である。 |
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ルラ夫人 |
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クーポーの上の姉、造花細工の女工。自分にしか分からない意味不明の卑猥な冗談を言って、ひとりで満足している。ナナの伯母として第9巻『ナナ』にも登場。オールドミスを戯画化したような人物だが、ナナのことは本心から気づかっており、そう悪い人間ではないと思われる。 |
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ロリユ夫人 |
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クーポーの下の姉で、金細工職人ロリユの妻。仕事場に入った人間が、靴の裏に金粉をつけて持ちだすことを警戒してばかりいるけちけち屋。ジェルヴェーズに敵意を抱き、クーポーとの結婚後も打ち解けようとしない。そのくせ祝い行事に呼ばないと後でぐちぐち嫌味を言う、下町封建主義おばさん。 |
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ユーラリー・ビジャール |
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飲んだくれビジャール親爺の長女。文句なしで、この作品中もっとも可哀想な人物である。親父に殴り殺された母親の代わりをつとめて家事を切り盛りし、これまた母親の代わりに親父に殴られる。いつも体じゅう傷だらけで、最後に衰弱死してしまうときには、着るものさえろくにない。それでも死ぬ直前まで夕食の支度を心配している。 |
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