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2002.9.29 ゾラ没後100周年
ルーゴン・マッカール双書

 19世紀後半、フランスの作家エミール・ゾラ(Émile Zola, 1840-1902)は、急速に発展する生理学と実証主義の影響を受けて、自然主義(naturalisme)と称する文学潮流を確立した。人間の性格が環境と遺伝によって決定されるとする立場からゾラは当時のフランス社会に対する緻密な観察と資料収集を続け、これに基づいて、社会的・生物学的環境の力によって盲目的に動かされてゆく人々の姿を、その作品の中に描き出していった。このような作品の典型であり、ゾラの代表作ともなった小説が、「ルーゴン・マッカール双書(Les Rougon-Macquart)全20巻である。

 
エミール・ゾラ
エミール・ゾラ
生涯と年譜
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DATA:ゾラ
<全20巻構成>
1ルーゴン家の繁栄ルーゴン・マッカール家の由来と内乱に倒れたシルヴェール少年の悲恋
2獲物の奪い合い愛さえも金のために利用する投機師アリスティドと息子マクシムの策謀
3パリの胃袋中央市場の活気の中で平穏に進んでゆく小売商リザの小市民的生活。
4プラッサンの征服悪僧フォージャの手で狂信の犠牲となり破滅するフランソワとマルト夫婦。
5ムーレ神父の罪聖母信仰と肉体の愛との間で引き裂かれる神父セルジュのの苦しみ。
6ウージェーヌ・ルーゴン閣下陰謀が渦巻くパリ政界で権力を追求して暗躍するウージェーヌの記録。
7居酒屋悪徳にまみれたパリの居酒屋が下層労働者ジェルヴェーズを堕落させる。
8愛の一ページパリを遠望する静かな街での母エレーヌと娘ジャンヌの愛の葛藤の物語。
9ナナ腐敗した第二帝政の貴族をの魔力で食い物にする金蠅ナナの生涯。
10ごった煮野心的な青年オクターヴがかいま見たブルジョワの実態と乱れた風俗
11ボヌール・デ・ダーム百貨店大百貨店主となったオクターヴは商品の魅力でパリの全女性を虜にする。
12生きる喜び雄大な海辺の村で営まれるポーリーヌのささやかな青春と生命への賛歌。
13ジェルミナール炭鉱労働者の目覚めを願って労働運動に身を投ずるエチエンヌの苦難。
14制作芸術の理想のためついに死に至る天才画家クロードの凄絶な創作秘話。
15大地むき出しの肉欲と根強い因襲が残る農村でのよそ者ジャンの苦労と挫折。
16孤児として修道院で育つ薄倖の少女アンジェリックの束の間のと幸福。
17獣人異常性欲がもたらす盲目の狂気は機関士ジャックを犯罪へと駆りたてる。
18金銭巧みな株価操作で金融界を手玉に取る山師アリスティドの欲望の行方。
19壊滅パリを焼き尽くす敗戦の炎の中を再建のため歩き出す兵士ジャンの姿。
20パスカル博士新たな時代のためにクロチルドとパスカルが残した愛と希望と生命の詩。

 1871年から1893年にわたってほぼ年一冊の割合で刊行され、全20巻におよんだこの双書は、フランス第二帝政期(1852-1871)を舞台にとった一大叙事詩である。ゾラはバルザックの「人間喜劇」にならって「人物再登場」の手法を採用し、神経症の遺伝を持った貴族の娘アデライード・フークを源とする二つの家系、ルーゴン家とマッカール家に生まれた人々の人生を、社会状況と照応させながら五世代にわたって描く。また同時に、多種多様な職業の実態をあからさまに暴き出し、「第二帝政下におけるある家族の自然的社会的歴史(histoire naturelle et sociale d'une famille sous le Second Empire)という副題をも持つこの双書は、19世紀フランスのすぐれた社会誌にもなっている。

 ルーゴン・マッカール双書は、『居酒屋』『ナナ』『ジェルミナール』などフランス文学史上に残るゾラの傑作を含み、特に迫力ある群衆描写で名高い。また、精神分析や構造主義の視点から読み直しがなされるなど、本国フランスでも近年再評価がすすんでおり、現在なお大きな興味を抱かせる作品である。

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