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3巻『パリの胃袋』

新訳(ゾラ・セレクション版)に基づいてリメイク中。以下の紹介は武林無想庵訳による。

Le Ventre de Paris, 1874 DATA:『パリの胃袋』
パリの胃袋
 パリで売りさばくために郊外からあらゆる産品が集中する中央市場をパリの「胃袋」にたとえ、その働きの全貌に迫ろうとしたルポルタージュ的作品。そのいっぽうで小商店主リザの一家に闖入した共和主義者フロランがやがて排斥されるまでを描き、小市民たちの良くも悪くも即物的な生活態度に照明を当てる。活気あふれる中央市場の描写はゾラの本領を遺憾なく示して名高く、本作を躍動感に満ちたパリの生活誌にもしている。
舞台設定
時: 1858/09-1859
場所: パリ
主人公: リザ
職業: 肉屋のおかみ
資料と分析
プレイヤード版で312pp
6
登場人物35
抜粋集
あらすじ

 1851年クーデターの際、無実の罪でギアナに流刑にされ、脱走してきた青年フロランはパリへ帰還して、農家の主婦マダム・フランソワや、画家をめざす青年クロードと出会った後、肉屋をやっている弟クニューの一家に身を寄せる。幼少時代の苦労を共にしたクニューはフロランを快く迎え、やがてフロランはパリ中央市場で海魚部監督官の仕事につく。
 メユダン家の次女クレールとの親交、マルジョランとキャディーヌの奔放な愛情など、人々の雑多な欲望が渦巻くパリを舞台に、フロランの生活は過ぎてゆく。だが、やがて旧友ギャヴァールに誘われてパリでの内乱の計画に参加し始めたフロランを、クニューの妻リザはうとましく思いはじめる。
 フロランが脱走してきた前科者だという噂が周囲に広まり、店の発展と家族の安泰を気づかったリザは、フロランとギャヴァールを警察に密告する。警察はフロランを反乱者と断定して不意をついて彼を逮捕する。この見せ物にしばらく熱狂した後、パリの人々はふたたび日常に戻る。

主な登場人物

フロラン
 ギアナから脱走してきた青年で、クニューの兄。インテリらしく共和主義者だが、過激派ではなく、およそ無害な人物である。家庭教師をしていた教え子(ミュシュ)にレヴォリュシオンなどという字を練習させていたので、警察ににらまれて逮捕されてしまう。

リザ・マッカール
 プチ・ブルジョワ的心性の代表者。主義や理想より、自分の店の発展に最大の関心を注ぐ。フロランをめぐる不穏な噂が広がるとたちまち不安になって彼を追い出し、後には警察に密告する。良くいえば善良、悪くいえば日和見、というところであろうか。まあ、気持ちはわからないでもないけれど。

クニュー
 フロランの弟で、いちおう肉屋の主人だが、少々リザの尻に敷かれ気味。この人は作中あまりインパクトがない。兄が逮捕された後で泣き言を言うけれども、結局はリザに説得されてしまう。

クロード・ランチエ
 リザの甥の画家。『居酒屋』のジェルヴェーズの長男である。第14巻『制作』で主人公になるが、思いがけずこんなところに登場して、フロランの友人としてけっこう重要な役割を果たす。

ギャヴァール
 フロランをそそのかして内乱を企むグループに引き込んだ飲んだくれ。いわゆる「口先だけの共和主義者」であり、要するに、酔って政府をこきおろせばそれだけで満たされて、あとは何もしないタイプ。でも言ってることは過激だからフロランと一緒に逮捕される。

マルジョラン
 中央市場をうろうろしている若者。キャディーヌの恋人。リザに欲望を抱きスキを見て襲いかかるが、突き飛ばされて頭を打ち、重体に陥る。まったく、なにやってんだか……。

キャディーヌ
 中央市場をうろうろしている娘。マルジョランの恋人。

フランソワ夫人
 この作品で唯一ともいえる「外部の視点」を提供する、ナンテールの農家のおかみ。登場する機会は少ないが、フロランを助けたりクロードを庇護したりと、なかなか重要な位置を占める。

ポーリーヌ・クニュー
 リザの娘。第12巻『生きる喜び』で主人公となるが、この作品ではまだ6歳である。

ミュシュ・メユダン
 町の悪ガキ。ポーリーヌに意地悪して泣かせたのはこいつである。まあ、屈託のない性格なので印象は悪くない。

翻訳文献

2003年にゾラ・セレクションの一冊として本作の新訳が出た。

訳文新・入手易 ゾラ・セレクション2 パリの胃袋 (朝比奈弘治、論創社、2003/03/30)
  訳者解説
訳文古・入手難 「ルーゴン=マッカール叢書」セレクション2 巴里の胃袋 (武林無想庵、本の友社、1999/06/10)
  訳者序/昭和6年春秋社版の復刻

関連事項

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