オクターヴ・ムーレ |
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南仏からパリへ出てきた、若く美貌の青年。ヴァブル館の婦人たちを情事に引き入れる女たらしというのが、作中でのイメージである。しかし彼が挑んで情事にこぎつけた女は四人中一人だけ(マリー・ピション)であり、よく考えると、そんなに女たらしとは言えない。この点、生粋のパリジャンであるトリュブロやギュランのほうが成功している。やはりオクターヴの本領はその商才であり、彼は「女によって出世する」よりむしろ「出世してから女遊びに精を出す」タイプと言えよう。 |
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ベルト・ジョスラン |
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ジョスラン一家の妹娘。美しいが、金持ちではなく持参金もあまり出せないので、媚態によって男をつかまえるために母から特訓を受ける。そういう打算的な愛嬌を振りまくことを初めは嫌っていたものの、後半、結婚してからは妙に母親に似てくるのには苦笑させられる。「人から気の毒がられるよりも、人をうらやましがらせるほうがまし」というのは、この親子そろっての口癖である。 |
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ジョスラン夫人 |
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ヴァブル館5階の住人。この作品の中で最も揶揄を込めて描かれている人物と言える。自分が属している社交界の偏狭な規範にとらわれ、ブルジョワとしての体裁と華美な外見を保つことにばかり熱中する。すべての物事を自分の虚栄心を基準にして測るものだから、内職までしてドレス代を捻出している夫に対しては不満しか抱かないし、娘の持参金捻出のために詐欺まがいのことまで平気でする。 |
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ジョスラン氏 |
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ガラス工場の会計係をしているが、その給料だけでは妻子の贅沢をまかなうことができないので、1000枚で3フランの帯封書きの内職をして副収入を得ている。夫人の虚栄と暴走に対してブレーキをかけようと試みるが、その温厚な性格と、結婚したときの立場の弱さのために、結局夫人に押し切られてしまう。のち、母と娘の口論に耐えきれず、卒中を起こしてそのまま死去。善良な人なんだけど、あまりにも気が弱すぎた……。 |
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カンパルドン |
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ヴァブル館4階の住人。オクターヴの両親と友人で、パリに出てきたオクターヴの世話を焼く。彼がプラッサンへ出張したときに出会ったローズが、カンパルドン夫人。ローズの親友で、のちにパリへ出てきたガスパリーヌが、カンパルドンの第二夫人。夫人は真相を知らないので、第二夫人と仲良く同居する。 |
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ジュヴェイリエ |
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控訴院判事。厳格な道徳観の持ち主だが、夫人に毛嫌いされているので愛人を囲い、愛人がいないときは隣人の女中に手を出す。愛人のクラリスに捨てられたのがショックで拳銃自殺をはかるが、失敗して顎をぶち抜くにとどまる。これ以後、使用人たちからはひそかに「横にまがった口」という綽名をちょうだいすることになる。なお、アデールの項も参照のこと。 |
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エドゥアン夫人 |
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高級服飾店「ボヌール・デ・ダーム」の支配人。夫はすでに亡く、未亡人ながら店の経営に辣腕をふるう。オクターヴの商才を高く評価するが、彼の誘いには乗らない。オクターヴがヴァブル館を出たのち、彼と再婚して店を預ける。重要人物のはずなのに作中にはあまり出てこず、どういう人物なのか今ひとつわかりかねるところがある。 |
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マリー・ピション |
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ヴァブル館5階の住人。オクターヴの、この作品中で唯一成功した情事の相手。すでに結婚して子どももいるが、人形のように過保護に育てられたために世間知らずで、子どもに服を着せることもできない。しかし、逢い引きを夫に見つかって締め出しをくらっているベルトを助けるなど、情に厚い側面もある。無知だが不実ではない女性といえよう。 |
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アデール |
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ジョスラン家の女中。アデールは物語の後半で、一説によると「菓子パンの鋳型をく」った。そんなもの食ったら腹が痛くなるわけで、彼女はある夜、一晩中血まみれになって苦しみ、腹から出てきたものをこっそり捨てにいく。カンパルドン家の料理女ヴィクトワールが尋ねるには、「お前はあの横にまがった口で鋳型を食べたのかい」。なお、ジュヴェイリエの項も参照のこと。 |
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ヴァレリー夫人 |
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家主の次男テオフィル・ヴァブルの妻。息子のカミーユは、サン・タンヌ街の肉屋の若い衆につくらせたもの。非常な浮気女の評判があるいっぽうで、オクターヴの誘いには乗らない。謎めいたふるまいの真相はどうもはっきりしないのだが、一種の自己抑制不能な淫乱症のようなものであるらしい。 |
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グール氏 |
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ヴァブル館の管理人。アパルトマンの風紀が乱れていないかどうか、常に目を光らせている。彼の道徳観によると、ヴァブル館は体面を重んじるので労働者や女工は入居させたくなく、この点でジュヴェイリエと意気投合する。彼が追い出した出産直前の女工がのちに嬰児殺を犯し、ジュヴェイリエはこの女工に重罰を宣告する。 |
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オーギュスト |
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家主の長男。ヴァブル館の1階と中2階を使って絹織物店を開くが、ボヌール・デ・ダームの事業拡大に伴って経営は苦しくなるいっぽうである。ベルトの媚態にひっかかって結婚するが、あてにしていた持参金をジョスラン夫人にはぐらかされたばかりでなく、けちな性格のため妻と気が合わずベルトを情事に走らせる。 |
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