セルジュ・ムーレ [Serge Mouret] |
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本作の主人公の敬虔な神父。そもそもこの人が記憶を失ったりしたのが、本作の悲劇の元凶だったのである。自分が妊娠させた少女が、帰ってきてくれと泣いて頼んでいるのに、聖母様がどうとかわけのわからぬことを言って捨ててしまう。パスカル博士でなくとも、ばかもの、と怒鳴りたくなるところであろう。 |
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アルビーヌ [Albine] |
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広大な庭をもつさびれた屋敷パラドゥに、祖父と共に暮らす奔放な少女。正規の教育も受けず、森の中を駆け回っている野性的な娘で、セルジュとの間に愛をおぼえてからは一挙に女性として開花する。しかしその後裏切られ、自殺同然の最期を遂げる。本作の「薄倖の人」ナンバーワン。 |
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デジレ・ムーレ [Désirée Mouret] |
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セルジュの妹。両親からの遺伝により生まれながらの知恵遅れになってしまった、動物好きの美しい娘。彼女の存在もまたルーゴン・マッカール家の病んだ血の結果ではあるが、しかしゾラはデジレのことは決して貶めてはいない。デジレは純粋な魂の持ち主であり、無神論者の娘として獣のように蔑まれていたアルビーヌに対して、最初から偏見を持つことなく接したのは彼女とパスカル博士だけなのである。 |
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パスカル・ルーゴン [Pascal Rougon] |
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私の好きなパスカル先生である。その誠実な人柄は本書でも存分に発揮されている。特に本作では、怒るべきときにはきちんと怒る、という一面を見せており、私はますます魅せられてしまった。 |
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ジョンバルナー [Jeanbernat] |
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アルビーヌの祖父の無神論者。大胆不敵なじいさんであるが、最も痛快なのは最後の場面でのふるまいであろう。ジョンバルナーは嫌味な信心家のアルシャンジエといがみ合っていて、「いつかお前の耳を切り落としてやるぞ」などと悪態をついていたりしたのだが、これはただの脅しではなかった。アルビーヌの葬儀に参列していたアルシャンジエの背後に音もなく忍びより、いきなりナイフで耳を切り取ってしまうのである。恐るべき特技である。 |
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