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1巻『ルーゴン家の繁栄』

新訳(論創社版)に基づいてリメイク中。以下の紹介は吉江喬松訳による。

La Fortune des Rougon, 1871 DATA:『ルーゴン家の繁栄』
ルーゴン家の繁栄
 ルーゴン・マッカール双書の幕開けを飾る記念碑的作品。第二帝政の始まりを画す1851年クーデターを背景として、南仏の地方都市プラッサンにルーゴン家・マッカール家の両家系が誕生したあらましが語られる。一族の源となった神経症の女アデライードに始まり、貪欲の権化ピエール・ルーゴン、怠惰の化身アントワーヌなど、もっぱら第3世代までの人々を紹介する一方、アデライードの愛した孫シルヴェール・ムーレと少女ミエットの幸薄い恋と残酷な死を描き、両家の血塗られた歴史の幕開けを象徴する。双書の全体像を知るためには必読の作品。
舞台設定
時: 1851/12
場所: プラッサン
主人公: ピエール/アントワーヌ/シルヴェール
職業: 地方地主/浮浪人/職人見習い
資料と分析
プレイヤード版で312pp
7
登場人物49
抜粋集
あらすじ

 1851年12月。ルイ・ナポレオンのクーデターに対して憤った南フランスの民衆は、一揆の群集となってパリをめざす。ルーゴン家の一族が住むプラッサンの街にも、共和派の群集の一団が押し寄せようとしていた。
 プラッサンに住む二人の恋人、共和主義に熱狂する少年シルヴェール・ムーレと、殺人者の父をもったために迫害されている少女ミエットが、この一揆の集団に加わる。いっぽう、保守派の小市民、シルヴェールの伯父ピエールはこの機会にプラッサンで勢力を伸ばそうともくろみ、虚栄心の権化の妻フェリシテらとともに術策をめぐらす……。
 事態が二転三転するうちに、自己の保身をはかるルーゴン家、マッカール家の人々の、それぞれの性格が発揮されていく。

主な登場人物

シルヴェール・ムーレ Silvère Mouret
 アデライードの愛する孫。叔父アントワーヌの影響を受けて共和派に共感するが、それは政治的信念というよりは虐げられた人々への同情からである。ミエットとの間に幼い恋を育む普通の少年であり、暴徒に加わったのも若者らしい熱狂からにすぎない。サン・メトルの広場で憲兵に射殺される最期は悲劇的である。

ミエット Miette
 ジャス・メフラン家に奉公する少女で、シルヴェールの恋人。その生い立ちは作中じゅうぶん明らかでないが、父が殺人犯の疑いをかけられたために、彼女自身も不遇な扱いを受けてきたらしい。暴動のさなか赤い旗を掲げて暴徒の先頭に立つ姿が美しい。しかし非情な流れ弾が彼女の胸を貫き、シルヴェールとパスカルの見守るなか、息をひきとる。

アデライード・フーク Adélaïde Fouque
 ルーゴン・マッカール家の源となった神経症の女性。現在、孫のシルヴェールと二人で暮らしている。双書の開幕にあたる本作ですでに70歳を越えている。のちの巻では登場することはないものの、なんだかんだいって最終巻『パスカル博士』まで生き延びる。

ピエール・ルーゴン Pierre Rougon
 アデライードが農夫ルーゴンとの間に生んだ子。金銭欲・出世欲が強く貪欲な性格であるが、成功のために果断な行動をとるだけの勇気はない。常に周到に根回しした後で大言壮語する。端的に申し上げると、ただの卑怯者である。

フェリシテ・ピュエシュ Félicité
 ピエールの妻であり、ルーゴン家の成功を陰で操作する黒幕。ピエール、ウージェーヌ、アリスティドに対して強い影響力をもち、実質的にルーゴン家の主とも言える。彼女の影響力から脱している唯一の家族はパスカルである。ルーゴン家第3世代以降の貪欲な性格には、アデライード→ピエールの遺伝だけではなく、このフェリシテの血が入っていることも影響を与えていると思われる。

アントワーヌ・マッカール Antoine Macquart
 アデライードと密輸業者マッカールとの間の子。飲んだくれ。ひたすら飲んだくれである。飲んだくれ以外の特徴としては、妻ジョゼフィーヌを殴る、長女リザを殴る、次女ジェルヴェーズを殴る、長男ジャンを殴る、働かない、などがある。遺産をピエールに騙し取られたことを恨みに思い、ピエールにたかる。

パスカル・ルーゴン Pascal Rougon
 ピエールの次男、医者。プラッサンの郊外に一人で暮らし、ささやかな医業のかたわら遺伝の研究に没頭する。ルーゴン・マッカール家の人々に及ぼす遺伝の影響を記録し続ける双書全体の語り部的役割を担い、家系の中でも例外的に誠実な人柄をもつ。

アリスティド・ルーゴン Aristide Rougon
 ピエールの三男。時勢に応じて共和派と保守派の間を渡り歩く、節操のない新聞記者。小狡く臆病で、きょうだいの中では最も父親似かもしれない。本作ではまだ、後のいんちき投機師の面影はあまり見られないが、放蕩息子となるマクシムはすでに生まれている。

翻訳文献

ゾラ没後100年を機縁として、2003年についに本作の全訳が出た。

訳文新・入手易 ルーゴン家の誕生 (伊藤桂子、論創社、2003/10/30)
  訳者あとがき、ルーゴン=マッカール家系樹
訳文古・入手難 「ルーゴン=マッカール叢書」セレクション1 ルゴン家の人々 (吉江喬松、本の友社、1999/06/10)
  「ルゴン・マカアルについて」、原著者の序文/昭和7年春陽堂版の復刻

関連事項

書評 『ルーゴン家の繁栄』
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