ゾラ

エミール・ゾラ（Zola, Émile 1840-1902）

［フランス語］ 19世紀の小説家。自然主義の提唱者。

生涯

南仏エクスの土木技師の子として生まれ、セザンヌらと友情を育みながら牧歌的な青春時代を送る。パリでの貧窮生活を経験してレアリスムへと傾斜、1867年『テレーズ・ラカン』を発表したのち自然主義を提唱する。環境と遺伝が人間を決定するという決定論の立場から大作『ルーゴン・マッカール叢書』全20巻を完成。その後は社会主義への共感を示し、ドレフュス事件に際して軍部を批判するなど政治的にも活躍した。

代表作
居酒屋 L'Assommoir 1877	パリの洗濯女ジェルヴェーズは二人の子供を抱えながら、幸福な生活を夢みて懸命に働く。しかし、やっとの思いで築いた地位は突然の不幸でもろくも崩れる。パリの下町で繰り広げられる暴力と怠惰に満ちた毎日。居酒屋の安酒がジェルヴェーズの心身を着実に蝕んでいった……。ルーゴン・マッカール双書第７巻。小説家ゾラの最初の成功作であり、双書中の代表作であるばかりでなくフランス文学史上の傑作のひとつに数えられる。新聞連載当時その描写が不道徳だとして世論から厳しい非難を浴びたことは有名。庶民の生活の悲惨さの描写や破滅的な結末などはゾラが主張した自然主義文学の典型をなしている。
ジェルミナール Germinal 1885	職を求めて北仏の炭坑町モンスーを訪れた機械工エチエンヌ・ランチエは、坑夫として過酷な環境で働き始める。やがて労働者の環境改善を求める強い意志を抱いてエチエンヌは坑夫たちのリーダーとしてストライキを指導するが、資本家との対立が深まるなか、決定的な衝突が起こる。ルーゴン・マッカール双書第１３巻。『居酒屋』『ナナ』とならぶゾラの代表作で、質量ともにゾラ文学の最高峰に位置づけられる。炭鉱労働者たちの過酷な労働環境と、怒りにかられた群衆の迫力ある描写はゾラの真骨頂を示して名高く、本作において社会主義に対するゾラの傾倒は確固たるものとなった。

作品（原題のアルファベット順）
作品名 ↑	原題名 ↑		区分	発表年 ↑	翻訳 ↓
アンジュリーヌ		Angeline ou la maison hantée	短編小説	1899	2015〈朝比奈弘治訳〉 2015〈國分俊宏訳〉
金　ルーゴン・マッカール叢書第１８巻	[L']	Argent 　Les Rougon-Macquart 18	長編小説	1891	2003〈野村正人訳〉
居酒屋　ルーゴン・マッカール叢書第７巻	[L']	Assommoir 　Les Rougon-Macquart 7	長編小説	1877	1978〈清水徹ベラージュ訳〉 1970〈古賀照一訳〉 1969〈田辺貞之助・河内清集英社デュエット訳〉 1959〈田辺貞之助・河内清筑摩大系訳〉 1955〈田辺貞之助訳〉上巻下巻
水車小屋攻撃	[L']	Attaque du Moulin	中編小説	1880	2015〈朝比奈弘治訳〉
ボヌール・デ・ダム百貨店　ルーゴン・マッカール叢書第１１巻		Au Bonheur des dames 　Les Rougon-Macquart 11	長編小説	1883	2004〈吉田典子訳〉 2002〈伊藤桂子訳〉
獣人　ルーゴン・マッカール叢書第１７巻	[La]	Bête humaine 　Les Rougon-Macquart 17	長編小説	1890	2004〈寺田光徳訳〉 1953〈川口篤訳〉上巻下巻
薔薇の蕾	[Le]	Bouton de rose	戯曲	1878
論戦	[Une]	Campagne	批評	1882
ビュルル大尉	[Le]	Capitaine Burle	中編小説	1882
クロードの告白	[La]	Confession de Claude	長編小説	1865	1967〈山田稔訳〉
プラッサンの征服　ルーゴン・マッカール叢書第４巻	[La]	Conquête de Plassans 　Les Rougon-Macquart 4	長編小説	1874	2006〈小田光雄訳〉
ニノンに与えるコント		Contes à Ninon	短編小説	1864
シャーブル氏の貝	[Les]	coquillages de M. Chabre	中編小説	1876	2015〈朝比奈弘治訳〉 2015〈國分俊宏訳〉
獲物の分け前　ルーゴン・マッカール叢書第２巻	[La]	Curée 　Les Rougon-Macquart 2	長編小説	1871	2004〈伊藤桂子訳〉 2004〈中井敦子訳〉
壊滅　ルーゴン・マッカール叢書第１９巻	[La]	Débâcle 　Les Rougon-Macquart 19	長編小説	1892	2005〈小田光雄訳〉
パスカル博士　ルーゴン・マッカール叢書第２０巻	[Le]	Docteur Pascal 　Les Rougon-Macquart 20	長編小説	1893	2005〈小田光雄訳〉
文学的文書		Documents littéraires	批評	1881	2007〈佐藤正年訳〉
エドゥアール・マネ		Édouard Manet	批評	1867	2010〈三浦篤・藤原貞朗訳〉
ムーレ神父のあやまち　ルーゴン・マッカール叢書第５巻	[La]	Faute de l'abbé Mouret 　Les Rougon-Macquart 5	長編小説	1875	2003〈清水正和・倉智恒夫訳〉
豊穣　四福音書第１巻		Fécondité 　Les Quatre Evangiles 1	長編小説	1899
コクヴィル村の酒盛り	[La]	Fête à Coqueville	短編小説		2004〈宮下志朗訳〉
辻馬車	[Le]	Fiacre	短編小説		2004〈宮下志朗訳〉
ルーゴン家の運命　ルーゴン・マッカール叢書第１巻	[La]	Fortune des Rougon 　Les Rougon-Macquart 1	長編小説	1871	2003〈伊藤桂子訳〉
ジェルミナール　ルーゴン・マッカール叢書第１３巻		Germinal 　Les Rougon-Macquart 13	長編小説	1885	2009〈小田光雄訳〉 1994〈河内清中公文庫訳〉上巻下巻 1964〈河内清中公全集訳〉 1954〈安士正夫訳〉上巻中巻下巻
ラブルダン家の相続者たち	[Les]	Héritiers Rabourdin	戯曲	1874
ジャック・ダムール		Jacques Damour	中編小説	1883	2015〈朝比奈弘治訳〉
生きる歓び　ルーゴン・マッカール叢書第１２巻	[La]	Joie de vivre 　Les Rougon-Macquart 12	長編小説	1884	2006〈小田光雄訳〉 1959〈河内清訳〉
ルールド　三都市物語第１巻		Lourdes 　Trois Villes 1	長編小説	1894
スルディス夫人		Madame Sourdis	短編小説	1880	2015〈國分俊宏訳〉
マドレーヌ・フェラ		Madeleine Férat	長編小説	1868
ある恋愛結婚	[Un]	Mariage d'Amour	短編小説		2004〈宮下志朗訳〉
わが憎悪		Mes Haines	批評	1866	2010〈三浦篤・藤原貞朗訳〉 2007〈佐藤正年訳〉
収穫月		Messidor	戯曲	1897
わがサロン		Mon Salon	批評	1866	2010〈三浦篤・藤原貞朗訳〉
オリヴィエ・ベカーユの死	[La]	Mort d'Olivier Bécaille	短編小説	1879	2015〈國分俊宏訳〉 2004〈宮下志朗訳〉
ある農夫の死	[La]	Mort d'un paysan	短編小説	1876	2015〈朝比奈弘治訳〉
マルセイユの秘密	[Les]	Mystères de Marseille	長編小説	1867
ナイス・ミクラン		Naîs Micoulin	中編小説	1883
ナナ　ルーゴン・マッカール叢書第９巻		Nana 　Les Rougon-Macquart 9	長編小説	1880	2006〈川口篤・古賀照一合本訳〉 2006〈小田光雄訳〉 1967〈山田稔訳〉 1956-1959〈川口篤・古賀照一訳〉上巻下巻 1955〈田辺貞之助・河内清訳〉上巻下巻
ナンタス		Nantas	短編小説	1878	2015〈國分俊宏訳〉
当代の劇作家たち		Nos auteurs dramatiques	批評	1881
新編ニノンに与えるコント		Nouveaux Contes à Ninon	短編小説	1874
新論戦		Nouvelle Campagne	批評	1897	2007〈佐藤正年訳〉 2002〈菅野賢治訳〉
制作　ルーゴン・マッカール叢書第１４巻	[L']	Œuvre 　Les Rougon-Macquart 14	長編小説	1886	1999〈清水正和訳〉上巻下巻
大荒れ	[L']	Ouragan	戯曲	1901
愛の一ページ　ルーゴン・マッカール叢書第８巻	[Une]	Page d'amour 　Les Rougon-Macquart 8	長編小説	1878	2003〈石井啓子訳〉
猫たちの天国	[Le]	Paradis des Chats	短編小説	1874	2004〈宮下志朗訳〉
パリ　三都市物語第３巻		Paris 　Trois Villes 1	長編小説	1898	2010〈竹中のぞみ訳〉上巻下巻
小さな村	[Le]	Petit Village	短編小説	1874	2015〈朝比奈弘治訳〉
ごった煮　ルーゴン・マッカール叢書第１０巻		Pot-Bouille 　Les Rougon-Macquart 10	長編小説	1882	2004〈小田光雄訳〉
一夜の愛のために		Pour une nuit d'amour	中編小説	1882	2015〈朝比奈弘治訳〉
ルネ		Renée	戯曲	1887
引き立て役	[Les]	Repoussoirs	短編小説	1866	2004〈宮下志朗訳〉
夢想　ルーゴン・マッカール叢書第１６巻	[Le]	Rêve 　Les Rougon-Macquart 16	長編小説	1888	2004〈小田光雄訳〉
実験小説論	[Le]	Roman expérimental	批評	1880	2007〈佐藤正年訳〉 1959〈河内清訳〉
自然主義の小説家たち	[Les]	Romanciers naturalistes	批評	1881	2007〈佐藤正年訳〉
ローマ　三都市物語第２巻		Rome 　Trois Villes 2	長編小説	1896
メダンの夕べ	[Les]	Soirées Médan	作品集	1880
ウージェーヌ・ルーゴン閣下　ルーゴン・マッカール叢書第６巻		Son Excellence Eugène Rougon 　Les Rougon-Macquart 6	長編小説	1876	2009〈小田光雄訳〉
大地　ルーゴン・マッカール叢書第１５巻	[La]	Terre 　Les Rougon-Macquart 15	長編小説	1887	2005〈小田光雄訳〉 1953〈田辺貞之助・河内清訳〉上巻中巻下巻
テレーズ・ラカン		Thérèse Raquin	長編小説	1867	2004〈宮下志朗訳〉 1966-1968〈小林正訳〉上巻下巻
労働　四福音書第２巻		Travail 　Les Quatre Evangiles 2	長編小説	1901
パリの胃袋　ルーゴン・マッカール叢書第３巻	[Le]	Ventre de Paris 　Les Rougon-Macquart 3	長編小説	1874	2003〈朝比奈弘治訳〉
真実　四福音書第３巻		Vérité 　Les Quatre Evangiles 3	長編小説	1903
真実は前進する	[La]	Vérité en marche	批評	1901	2002〈菅野賢治訳〉
広告の犠牲者	[Une]	Victime de la Réclame	短編小説	1866	2004〈宮下志朗訳〉
死女の願い	[Le]	Vœu d'une morte	長編小説	1866
周遊旅行		Voyage circulaire	短編小説	1883	2015〈朝比奈弘治訳〉

翻訳書
書名	編訳者	発行月	収録作品
岩波文庫『水車小屋攻撃　他七篇』	朝比奈弘治訳	2015-10	水車小屋攻撃ほか7編
光文社古典新訳文庫『オリヴィエ・ベカイユの死／呪われた家』	國分俊宏訳	2015-06	オリヴィエ・ベカーユの死ほか4編
藤原書店『書簡集　1858-1902』	小倉孝誠編＝解説	2012-04
白水社『パリ　下』	竹中のぞみ訳	2010-12	パリ（第三の書4-5・第四の書・第五の書）
白水社『パリ　上』	竹中のぞみ訳	2010-12	パリ（第一の書・第二の書・第三の書1-3）
藤原書店『美術論集』	三浦篤編＝解説	2010-07	わが憎悪ほか2編
論創社『ウージェーヌ・ルーゴン閣下』	小田光雄訳	2009-03	ウージェーヌ・ルーゴン閣下
論創社『ジェルミナール』	小田光雄訳	2009-01	ジェルミナール
藤原書店『文学論集　1865-1896』	佐藤正年編訳＝解説	2007-03	実験小説論ほか4編
新潮文庫『ナナ』	川口篤・古賀照一訳	2006-12	ナナ
論創社『プラッサンの征服』	小田光雄訳	2006-10	プラッサンの征服
論創社『ナナ』	小田光雄訳	2006-09	ナナ
論創社『生きる歓び』	小田光雄訳	2006-03	生きる歓び
論創社『大地』	小田光雄訳	2005-12	大地
論創社『パスカル博士』	小田光雄訳	2005-09	パスカル博士
論創社『壊滅』	小田光雄訳	2005-05	壊滅
論創社『夢想』	小田光雄訳	2004-12	夢想
藤原書店『獣人　愛と殺人の鉄道物語』	寺田光徳訳＝解説	2004-11	獣人
論創社『獲物の分け前』	伊藤桂子訳	2004-11	獲物の分け前
論創社『ごった煮』	小田光雄訳	2004-09	ごった煮
藤原書店『初期名作集』	宮下志朗編訳＝解説	2004-09	テレーズ・ラカンほか7編
ちくま文庫『獲物の分け前』	中井敦子訳	2004-05	獲物の分け前
藤原書店『ボヌール・デ・ダム百貨店　デパートの誕生』	吉田典子訳＝解説	2004-02	ボヌール・デ・ダム百貨店
藤原書店『金』	野村正人訳＝解説	2003-11	金
藤原書店『ムーレ神父のあやまち』	清水正和・倉智恒夫訳＝解説	2003-10	ムーレ神父のあやまち
論創社『ルーゴン家の誕生』	伊藤桂子訳	2003-10	ルーゴン家の運命
藤原書店『愛の一ページ』	石井啓子訳＝解説	2003-09	愛の一ページ
藤原書店『パリの胃袋』	朝比奈弘治訳＝解説	2003-03	パリの胃袋
藤原書店『時代を読む　1870-1900』	小倉孝誠・菅野賢治編訳＝解説	2002-11	新論戦ほか1編
論創社『ボヌール・デ・ダム百貨店』	伊藤桂子訳	2002-11	ボヌール・デ・ダム百貨店
岩波文庫『制作（下）』	清水正和訳	1999-09	制作（第八章-第十二章）
岩波文庫『制作（上）』	清水正和訳	1999-09	制作（第一章-第七章）
中公文庫『ジェルミナール（下）』	河内清訳	1994	ジェルミナール
中公文庫『ジェルミナール（上）』	河内清訳	1994	ジェルミナール
集英社『世界文学全集ベラージュ55　ゾラ』	清水徹訳	1978-09	居酒屋
新潮文庫『居酒屋』	古賀照一訳	1970-12	居酒屋
集英社『世界文學全集（デュエット版）37　ゾラ』	田辺貞之助・河内清訳	1969-05	居酒屋
岩波文庫『テレーズ・ラカン（下）』	小林正訳	1968-05	テレーズ・ラカン（２０-３２）
河出書房新社『カラー版世界文学全集16　ゾラ』	山田稔訳	1967-03	ナナほか1編
岩波文庫『テレーズ・ラカン（上）』	小林正訳	1966-09	テレーズ・ラカン（１-１９）
中央公論社『世界の文学23　ゾラ』	河内清訳	1964-05	ジェルミナール
新潮文庫『ナナ（下）』	川口篤・古賀照一訳	1959-12	ナナ（８章-１４章）
角川文庫『禁断の愛』	山口年臣訳	1959-10	未確認
筑摩書房『世界文學大系41 ゾラ』	河内清編	1959-02	居酒屋ほか2編
角川文庫『ごった煮（下）』	田辺貞之助訳	1958-12	未確認
角川文庫『ごった煮（上）』	田辺貞之助訳	1958-12	未確認
新潮文庫『ナナ（上）』	川口篤・古賀照一訳	1956-05	ナナ（１章-７章）
岩波文庫『ナナ（下）』	田辺貞之助・河内清訳	1955-09	ナナ
岩波文庫『ナナ（上）』	田辺貞之助・河内清訳	1955-06	ナナ
岩波文庫『居酒屋（下）』	田辺貞之助訳	1955-03	居酒屋
岩波文庫『居酒屋（上）』	田辺貞之助訳	1955-01	居酒屋
岩波文庫『ジェルミナール（下）』	安士正夫訳	1954-09	ジェルミナール（第六部・第七部）
岩波文庫『ジェルミナール（中）』	安士正夫訳	1954-09	ジェルミナール（第四部・第五部）
岩波文庫『ジェルミナール（上）』	安士正夫訳	1954-08	ジェルミナール（第一部-第三部）
岩波文庫『大地（下）』	田辺貞之助・河内清訳	1953-06	大地（第五部）
岩波文庫『大地（中）』	田辺貞之助・河内清訳	1953-04	大地（第三部・第四部）
岩波文庫『獣人（下）』	川口篤訳	1953-04	獣人
岩波文庫『獣人（上）』	川口篤訳	1953-02	獣人
岩波文庫『大地（上）』	田辺貞之助・河内清訳	1953-02	大地（第一部・第二部）

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