「おそらく君等の言ふことにも理がありませう、諸君」
と親切な微笑を見せながら彼等に言った、「では戦ひなさい。私は諸君の腕や脚の手當てをするために加はつてゐませう。」
共和派の暴動に理解を示すパスカル博士の言葉。
「この一族は完成した。」と彼は言った。「その中から一人の勇者が出る筈だ。」
共和派の暴動に参加するシルヴェール・ムーレを評するパスカル博士の言葉。しかしその勇者の命運はあまりにも短かった……。
そして彼はこの一家一門から出る多くの者のことを想ふのだつた。この一本の根株からは諸の枝が出て、樹液はその最も遠い、そして日光と陰影との環境に応じてそれぞれ別様の捻れ方をしてゐる枝葉にまでも同一の胚種を運んで行くのだ。彼は瞬間、日光の如く、ルゴン・マカアル家の未来を、放逸な飽満せる一群の貪欲者達を、黄金と血の火災の中にちらりと見たやうに思つた。
パスカル博士の予感。
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