千一夜物語マルドリュス版

千一夜物語マルドリュス版

夜な夜な臥床で語られる夢と幻想の物語。絢爛たる世界を開くアラビア文学屈指の古典。

ちくま文庫『千一夜物語(全10巻)』(佐藤正彰訳 1988-1989)準拠

 8世紀半ば、バグダードに首都を置いたイスラーム帝国アッバース朝は世界中の富と知識を集め、唐に比肩する文明国へと成長する。786年に即位した第5代教王(カリフ)のハールーン・アル・ラシードの時代にアッバース朝の隆盛は頂点をきわめ、絢爛たるイスラーム文化が花開くが、9世紀半ばからオリエント中世の全体を通じて、アラビア文学屈指の古典『千一夜物語』(Alf Layla wa-Layla)、いわゆる『アラビアン・ナイト』が成立した。

 『千一夜物語』は18世紀初頭にフランスのガラン(Antoine Galland)によるフランス語訳(1704-1717)を通じて初めてヨーロッパ社会に紹介され、人々の異国趣味を喚起してさかんに愛読された。このことが非ヨーロッパ世界への開眼を人々に促すとともに、ヨーロッパの社会体制を相対化して観察する啓蒙主義思想へと連なってゆくのである。開放的な気分にあふれた無数の夢と幻想の物語を蔵するこの古典は、その後も多くの文学者たちを魅了して多大な影響を残すとともに、20世紀に至るまでヨーロッパ各国で種々の翻訳を試みられてきた。ここではフランスのマルドリュス(Joseph-Charles Mardrus)によるフランス語全訳(Le Livre des Mille Nuits et une Nuit, 1899-1904)からの重訳である佐藤正彰訳に拠りつつ、この魅惑的な物語の宝庫を紹介する。

物語一覧
凡例と注記
枠構造
千一夜物語(最外枠)
ろばと牛と地主の間に起こったこと
商人と魔神との物語
第一の老人の話
第二の老人の話
第三の老人の話
漁師と魔神との物語
イウナン王の大臣と医師ルイアンの物語
シンディバード王の鷹
王子と食人鬼の物語
魔法にかけられた若者と魚の物語
荷かつぎ人足と乙女たちとの物語
第一の托鉢僧の物語
第二の托鉢僧の物語
第三の托鉢僧の物語
第一の乙女ゾバイダの物語
第二の乙女アミナの物語
斬られた若い女の物語
美男ハサン・バドレディンの物語
せむし男と、仕立屋、ナザレト人の仲買人、御用係およびユダヤ人の医者との物語
ナザレト人の仲買人の談
シナ王の御用係の談
ユダヤ人の医者の談
仕立屋の談
ちんばの若者とバグダードの床屋との物語
バグダードの床屋とその六人の兄の物語
床屋の物語
床屋の第一の兄バクブークの物語
床屋の第二の兄エル・ハダールの物語
床屋の第三の兄バクバクの物語
床屋の第四の兄エル・クーズの物語
床屋の第五の兄エル・アスシャールの物語
床屋の第六の兄シャカーリクの物語
アニス・アル・ジャリスの物語
恋の奴隷ガーネムの物語
スーダンの第一の宦官、黒人サウアーブの物語
スーダンの第二の宦官、黒人カーフールの物語
スーダンの第三の宦官、黒人バクヒタの物語
オマル・アル・ネマーン王とそのいみじき二人の王子の物語
三つの門についての言葉
オマル・アル・ネマーン王崩御の物語ならびにそれに先立つみごとな言葉
第一の乙女の言葉
第二の乙女の言葉
第三の乙女の言葉
第四の乙女の言葉
第五の乙女の言葉
老女の言葉
僧院の物語
アズィーズとアズィーザとうるわしき王冠太子の物語
美男アズィーズの物語
ドニヤ姫と王冠太子との物語
ダウールマカーンの王子、カンマカーンの冒険
鳥獣佳話
鵞鳥と孔雀夫婦の話
羊飼いと乙女
亀と漁師の鳥の話
狼と狐の話
小鼠と鼬の話
烏と麝香猫の話
烏と狐の話
アリ・ベン・ベッカルと美しきシャムスエンナハールの物語
ブドゥール姫の物語
「幸男」と「幸女」の物語
「ほくろ」の物語
博学のタワッドドの物語
詩人アブー・ヌワースの事件
船乗りシンドバードの物語
船乗りシンドバードの物語の第一話 そしてこれは第一の航海である
船乗りシンドバードの物語の第二話 そしてこれは第二の航海である
船乗りシンドバードの物語の第三話 そしてこれは第三の航海である
船乗りシンドバードの物語の第四話 そしてこれは第四の航海である
船乗りシンドバードの物語のうち第五話 そしてこれは第五の航海である
船乗りシンドバードの物語のうち第六話 そしてこれは第六の航海である
船乗りシンドバードの物語のうち第七話 そしてこれは第七の最後の航海である
美しきヅームルッドと「栄光」の息子アリシャールとの物語
色とりどりの六人の乙女の物語
青銅の町の物語
イブン・アル・マンスールと二人の乙女との物語
肉屋ワルダーンと大臣の娘との物語
地下の姫、ヤムリカ女王の物語
悲しみの美青年の物語
花咲ける才知の花壇と粋の園
アル・ラシードと放屁
若衆とその師匠
不思議な袋
愛の審判者アル・ラシード
いずれを選ぶか。青年か、はたまた、壮年か
胡瓜の値段
白髪
悶着解決
アブー・ヌワースとゾバイダ妃の水浴
アブー・ヌワースの即詠
驢馬
ゾバイダ妃の現行犯
雄か雌か
分け前
学校の先生
肌着の銘文
盃の銘文
籠の中の教王
臓物の掃除夫
乙女「涼し眼」
乙女か青年か
奇怪な教王
「蕾の薔薇」の物語
黒檀の馬奇談
凄腕ダリラの物語
漁師ジゥデルの物語または魔法の袋
アブー・キールとアブー・シールの物語
『匂える園』の道話
三つの願い
若者と風呂屋の按摩
白にもいろいろ
陸のアブドゥラーと海のアブドゥラーの物語
黄色い若者の物語
「柘榴の花」と「月の微笑」の物語
モースルのイスハークの冬の一夜
エジプトの百姓とその色白の子供たち
貧乏カリーフの物語
ハサン・アル・バスリの冒険
陽気で不作法な連中の集い
歴史的な放屁
二人の悪戯者
女の策略
眼が覚めながら眠っている男の物語
ザイン・アル・マワシフの恋
無精な若者の物語
若者ヌールと勇ましいフランク王女との物語
寛仁大度と処世の道の談話会
サラディンとその大臣
比翼塚
ヒンドの離婚
処女の鏡の物語
アラジンと魔法のランプの物語
人の世のまことの知恵の譬え話
薔薇の微笑のファリザード
カマールと達者なハリマの物語
羊の脚の物語
運命の鍵
巧みな諧謔と楽しい知恵の集い
減らない草履
アル・ラシードの道化役バハルル
世界平和への招待
床入り封じの呪い
二人の麻酔薬飲みの物語
屁の父法官の物語
法官驢馬
法官と仔驢馬
名法官
女知りの教え
麻酔薬飲みの判決
ヌレンナハール姫と美しい魔女の物語
真珠華の物語
帝王マハムードの二つの生涯
底なしの宝庫
気の毒な不義の子のこみ入った物語
若者の猿の物語
第一の狂人の物語
第二の狂人の物語
第三の狂人の物語
九十九の晒首の下での問答
細君どもの性悪さ
菓子屋の話した物語
八百屋の話した物語
肉屋の話した物語
竪笛楽長の話した物語
アリ・ババと四十人の盗賊の物語
バグダード橋上でアル・ラシードの出会った人たち
白い牝馬の主人の若者の物語
インドとシナの曲を奏する人々を従えた馬上の若者の物語
気前のよい掌の老人の物語
口の裂けた片輪の学校教師の物語
橋上で頬を殴ってもらう盲人の物語
スレイカ姫の物語
のどかな青春の団欒
頑固な頭の少年と小さな足の妹
足飾り
王女と牡山羊の物語
王子と大亀の物語
エジプト豆売りの娘
解除人
警察隊長
誰が一番寛大か
去勢された床屋
ファイルーズとその妻
生まれと性根
魔法の書の物語
金剛王子の華麗な物語
滑稽頓知の達人の奇行と戦術から
乙女 心の傑作、鳥の代官の物語
バイバルス一世と警察隊長たちの物語
第一の警察隊長の語った物語
第二の警察隊長の語った物語
第三の警察隊長の語った物語
第四の警察隊長の語った物語
第五の警察隊長の語った物語
第六の警察隊長の語った物語
第七の警察隊長の語った物語
第八の警察隊長の語った物語
第九の警察隊長の語った物語
第十の警察隊長の語った物語
第十一の警察隊長の語った物語
第十二の警察隊長の語った物語
海の薔薇とシナの乙女の物語
蜂蜜入りの乱れ髪菓子と靴直しの災厄の妻の物語
知識と歴史の天窓
詩人ドライド、その高邁な性格と高名の閨秀詩人トゥマーディル・エル・ハンサーへの恋
詩人フィンドとその二人の娘、女丈夫日輪オファイラと月輪ホゼイラ
王女ファーティマと詩人ムラキースとの恋の冒険
フジル王の復讐
夫君の品定め
両断者オマル
歌姫空色のサラーマー
押しかけ客
薄命の寵姫
悲しき首飾り
モースルのイスハークと新曲
二人の舞姫
ピスタチオ油のクリームと法学上の難問解決
泉のアラビア娘
しつこさの報い
ジャアファルとバルマク家の最期
素馨王子と巴旦杏姫の優しい物語
大団円
耽読古典ライブラリ ≫ 千一夜物語マルドリュス版