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98points |
マユード la Maheude |
―じゃ、また近いうちにね、今度こそは大きな打撃をあたえてやろう。 (『ジェルミナール』第7部第6章) |
7人の子どもを育てる炭鉱の主婦という役割から「素朴だが頑固」というイメージがあるが、実は柔軟な考え方と適切な表現力を持っている。教育はなくても賢い人物の典型で、労働者の置かれた状況について着実に理解を深め成長していく姿はまことに頼もしく、『ジェルミナール』の隠れた主人公とも言える。味方にしておきたい女ナンバーワン。 |
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97points |
トゥルイユ la Trouille |
―早く、足をどけてよ、のろまだね! (『大地』第3部第3章) |
快いまでにあらゆるしがらみから解放された、双書中おそらく随一無比の奔放系キャラ。「手を抜いて生きる」ということを知っているが、越えてはならない一線はわきまえている。つまり妥協の仕方を知っているということであり、これは男女を問わず稀な才能と言わねばならない。この先何があっても彼女の将来は大丈夫だろう。 |
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93points |
ポーリーヌ Pauline Quenu |
―この子の時代はたぶんもっと利口になるわ。 (『生きる喜び』第11章) |
ゾラの描く人物は単純で極端な性格の人が多いため、読者によって好き嫌いにはあまり差は出ないものなのだが、そのなかでも、この娘のことを悪く言っている批評というのはほとんど見たことがない。科学の進歩と生命の勝利を信じて困難な人生に立ち向かう前向きな少女。かわいい。 |
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91points |
ナナ Nana |
―なにが淫売よ! あんたの奥さんはどうなの? (『ナナ』第7章) |
ゾラの作品に出てくる全人物中、知名度はたぶん最も高い。パリの飲んだくれの家庭に生まれ、高級娼婦として天然痘で死ぬまでの18年の間に、あまりにも大きなインパクトを人々の中に残した。たたき上げの娼婦なので上流階級相手にも全然ひるまないところがよい。個人的には幼少時代のナナのほうに私は興味がある。 |
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87points |
デジレ Désirée Mouret |
―だって、郵便配達のマシウのように太ってるんですもの。 (『ムーレ神父の罪』) |
ムーレ家の知恵遅れの少女。無類の動物好きで、牛・馬・鳥・豚などなど、実にいろんな動物を飼っている。彼女のように善良な女性にはきちんと天寿をまっとうしてもらいたい。彼女は自分の飼っているブタにマシウという名前を付けたのだが、その理由を説明したのが上のセリフ。 |
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85points |
カトリーヌ Catherine Maheu |
―そうだともさ……ほんとに! やっとわかったの! (『ジェルミナール』第1部第3章) |
エチエンヌ・ランチエの想い人、モンスー炭鉱で働く健気な少女。彼女は女性として魅力的というより、そのあまりの気の毒さに読者の多大な同情をかうものであろう。登場したときの少年のようにざっくばらんな性格には好感がもてるが、その後いろんな苦難(シャバルとか)によって抑圧されていくのが悲しい。 |
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84points |
アルビーヌ Albine |
―あなたがわたしの眼の上に口づけしたとき、わたしほんとは眠ってなかったのよ。 (『ムーレ神父の罪』第3部第8章) |
パラドゥに住む無神論者ジャンベルナーに育てられた野生の少女。セルジュ・ムーレ神父を愛するがのちに裏切られる。きっとデジレと仲良しになれるはずだったと思うのだが、数回会っただけで死んでしまうのはなんとも惜しい。ロマンティックな最期を遂げたという点では『夢』のアンジェリックと比肩する。 |
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82points |
クリスティーヌ Christine |
―まあ! どうしよう! (『制作』第1章) |
田舎出身の無垢な少女。クロードと人生をともにしたので『制作』を読めば18歳から30歳過ぎまでフォローできる。その後どうなったかが気にかかる女性。なお上記のセリフは、初対面のクロードの部屋に泊めてもらって朝起きたら裸の胸をスケッチされていたときのもの。そりゃ、驚きますわな……。 |
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81points |
イルマ・ベコー Irma Bécot |
―かわいそうに、あまり楽しくなかったのね、あなた。かくさなくったっていいわ。 (『制作』第9章) |
ゾラはミュッセの影響をけっこう受けていると思うのだが、ミュッセのミミ・パンソンによく似ているのがこの人。親父に殴られて家出し、パリで娼婦になったというから境遇的にはナナに近いが、性格はやや洗練されている感じがする。クロードのことを好きらしいんだけど、本心は謎。 |
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78points |
ドゥニーズ Denise Baudu |
―奥様は少しばかり太りすぎていらっしゃるんです。 (『ボヌール・デ・ダーム百貨店』) |
ゾラはどうもドゥニーズの中に理想の女性像を描き出そうとしていたようである。たしかにすぐれた女性なのだが、私に言わせるとドゥニーズはあまりに非のうちどころがなさすぎるというか、屈折がなさすぎて、かくべつ強い好感を抱くことができない。こういう女性は、ひとつ間違うとただの脳天気だと思うんだけどなあ……。 |
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