千一夜物語 | 物語 | 船乗りシンドバードの第六話 | 親 | 前 | 次 |
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あらすじ
懲りないシンドバードはまた旅の魅力にとりつかれて航海に出たが船が難破して高い山のある島に取り残される。その島の浜辺には難破した船の宝石が無数に流れ着いていたが、これまで誰もそれを持ち帰ることはできなかった。食糧不足で仲間が倒れていくなか、ただ一人生き残ったシンドバードは山の麓の洞窟に流れ込んでいる淡水の川をたどって脱出することを思いつき、筏を作って川を下る。途中で気を失ったシンドバードが目覚めてみると、筏はセレンディブ島にたどり着いていた。シンドバードはセレンディブ王と会見し、冒険譚を聞かせて王を驚嘆させる。王は教王ハールーン・アル・ラシードへの豪華な進物をシンドバードに託して送り出し、無事バグダードに帰還したシンドバードは教王に進物を捧げる。セレンディブから持ち帰った財宝と教王の下賜品によってシンドバードは富裕と名誉とに包まれる。 解説
【シンドバードの嘆き】 今度の冒険では、シンドバードと仲間の船乗りたちは船が難破して無人島に流れ着いてしまう。彼らを襲った最大の困難は食糧不足であった。 〔仲間たちは〕とにかく食糧不足で、次々に、ばたばたと倒れずにはいなかった。しかし、私は自分の糧食を用心深く節約することができて、一日に一度しか食べなかった。それに、私は自分一人だけ、他に糧食を見つけ出していたのであったが、そのことは固く仲間に言わないようにした。(v4p511) 見つけた食糧を仲間に教えないという行動様式の評価については、もはやとやかく言わないことにしよう。第四の航海でも見たように、生き残るためには屈託なく他人を犠牲にしちゃうのが『千一夜』に見られる偉大なるアラブの精神というものだからである。ともかくシンドバードは最後まで生き残ってついに一人になってしまう。しかしそれでも救いは現れず、とうとう彼の食糧も底をつきそうになるのだが、そのときの彼の感慨には、さすがに誰もが呆れ果てるであろう。 そしていよいよ最後の時が迫ってくるのを見て、私はこう考えながら、わが身の上を泣きはじめた、「なぜ私は、仲間たちに先立って倒れてしまわなかったのか。そうすれば身を洗って埋めてもらい、埋葬してもらえたものを。全能のアッラーのほかには頼みも力もない。」(v4p511) 何を言ってるんであろうか。せこい手を使ってまで生き延びておいて、今さらそれはないだろうに。こういう男には全能のアッラーでも匙を投げたくなるんじゃないかという気がする。 |
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