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千一夜物語 物語
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船乗りシンドバードの物語の第四話
 そしてこれは第四の航海である

基礎データ
夜々 303夜〜第304
ページ vol. 4, pp474-492
枠レベル 2
話者 船乗りシンドバード
えっち度 (なし)
船乗りシンドバードの物語
船乗りシンドバードの物語の第三話
船乗りシンドバードの物語のうち第五話
枠構造
千一夜物語(最外枠)
船乗りシンドバードの物語
船乗りシンドバードの物語の第一話
船乗りシンドバードの物語の第二話
船乗りシンドバードの物語の第三話
船乗りシンドバードの物語の第四話
船乗りシンドバードの物語のうち第五話
船乗りシンドバードの物語のうち第六話
船乗りシンドバードの物語のうち第七話

あらすじ

 贅沢な暮らしに飽き足らなくなったシンドバードはまたもや商品を買い込んで船に乗り込む。だが船は嵐に遭って沈没し、シンドバードと仲間はある島に流れ着く。そこには素っ裸の黒い男たちがおり、シンドバードたちを宮廷に連れて行って料理をふるまう。食欲の起こらなかったシンドバード以外の仲間が皆がつがつと料理を平らげると、彼らの体は膨れ上がりぶくぶくになっていった。黒い男たちが食人鬼だと悟ったシンドバードはかろうじて宮殿を逃れ、島の反対側に胡椒を摘みにきていた人々に救われて彼らの島へ行く。この島の王は異国人シンドバードがもたらした知識に感嘆してシンドバードを厚遇し、シンドバードは町で妻を娶って生活を始める。だがこの島には、配偶者の一方が死んだときはもう一方が一緒に生き埋めになるという慣習があった。ほどなく妻が急死したためシンドバードはその遺骸とともに井戸の底に降ろされてしまう。シンドバードは他の犠牲者の持っていた食料と水を奪って生き延び、やがて出口を発見して脱出する。ぶじ救出されたシンドバードは井戸の底で死者たちから剥ぎ取った財宝を売って財産をつくり、バグダードへ帰還した。

解説

【生き延びる秘訣】

 ところで船乗りシンドバードというと、『千一夜物語』中でも屈指の知名度を誇る冒険者であり、七度にわたる波乱に満ちた航海から見事に生還したその強運には、多くの人々が賛嘆の念を禁じ得ないであろう。一回ごとの航海でさんざん懲りているはずなのになぜ七度も航海に出たのか、ということについては少々語るに落ちる事情があったりするわけだが、そういうことは今は考えないこととする。とにかく幾度も死の危険に遭いながら無事戻ってこれるというところにシンドバードの並々ならぬ天性があるわけである。

 さて実はこの物語では、シンドバードのそのしぶとさの原因が明らかとなる。追死の風習のある国で、妻の遺骸とともにわずか七つのパンと水のみを持たされて井戸の底に降ろされてしまったシンドバードは、こんどの航海中で最大のピンチを迎える。この危機を彼はどうやって乗り越えたのか。

けれどもやがて、もうパンも水もなくなる時機が来そうになった。そしてその時機は来てしまった。そこで、もう全く絶望して、私は信仰証言を唱えて、いよいよ目を閉じて死を待とうとすると、そのとき突然、頭上に当って、井戸の口が開いて、柩に入った死んだ男と、つづいて、七つのパンと水壺を携えたその妻が、降りてくるのが見えた。
 そこで私は、地上の人々が再び口をふさぐまで待ってから、こそりとも音を立てず、ごくそっと、死人の大きな骨を一本つかんで、一気にその女に躍りかかって、頭上に一撃を加えて打ち殺してしまった。そして確かに殺すため、更に二度三度と、力いっぱい打ちすえた。そのうえでその七つのパンと水を奪い、こうしてさらに数日分の食糧を手に入れた。
(v4p487-488)

 もうやりたい放題である。

ワンポイント・メモ

挿話 食人鬼 一度食べたら食欲が止まらなくなる魔法の料理を旅人に食わせ、まるまると太らせてから食料にする食人鬼(グール)がいる。(v4p476)
知識 胡椒の実 (v4p479)
挿話 鞍を知らぬ王国 その島では鞍や鐙の存在が知られておらず、人々は裸馬に乗っている。(v4p479)
挿話 追死の慣習 配偶者の一方が死んだときは、もう一方も一緒に埋葬されなければならない。(v4p482)

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