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千一夜物語 物語
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船乗りシンドバードの物語

基礎データ
夜々 291夜〜第316
ページ vol. 4, pp413-547
枠レベル 1
話者 シャハラザード
えっち度 (なし)
千一夜物語(最外枠)
詩人アブー・ヌワースの事件
船乗りシンドバードの物語の第一話
枠構造
千一夜物語(最外枠)
船乗りシンドバードの物語
船乗りシンドバードの物語の第一話
船乗りシンドバードの物語の第二話
船乗りシンドバードの物語の第三話
船乗りシンドバードの物語の第四話
船乗りシンドバードの物語のうち第五話
船乗りシンドバードの物語のうち第六話
船乗りシンドバードの物語のうち第七話

あらすじ

 ある日、バグダードに住む貧しい荷担ぎシンドバードは仕事の途中で、ある豪邸の前のベンチで一服して貧乏な我が身を嘆く詩句を即吟した。すると豪邸の中から小僧が出てきて、主人が会いたいと言っていると伝える。おそるおそる邸内に入ったシンドバードは、そこに眼もくらむばかりの饗宴が催されているのを見る。一座の主人はシンドバードを歓待して詩吟をせがみ、シンドバードはこれに応える。主人は船乗りシンドバードと名乗り、荷担ぎシンドバードに向かって、自分の経験した世にも不思議な航海について語り始める……。

船乗りシンドバードの物語の第一話

船乗りシンドバードの物語の第二話

船乗りシンドバードの物語の第三話

船乗りシンドバードの物語の第四話

船乗りシンドバードの物語のうち第五話

船乗りシンドバードの物語のうち第六話

船乗りシンドバードの物語のうち第七話

 船乗りシンドバードは七日にわたって七つの航海を物語り、一夜ごとに荷担ぎシンドバードに100枚の金貨を与えた。そして最後の航海の物語を終えてから、荷担ぎシンドバードに言うのだった、おまえの荷担ぎとしての運命のほうがはるかに平穏無事なものではなかったろうかと。荷担ぎシンドバードは自分の軽率な詩吟を撤回する。船乗りシンドバードは荷担ぎを屋敷の家令に召し、二人は繁栄と友情の中で末永く幸福に暮らした。

解説

【シンドバードの冒険の結末】

 この「船乗りシンドバードの冒険」は、バグダードの大金持ちシンドバードが、船乗りだったころの七度の航海の経験を同名の若い荷担ぎシンドバードに語って聞かせる、という基本的構造をとっている。すでに七度の冒険を終えて富豪となった船乗りシンドバードが、自己の若き日の驚異に満ちた航海を若者に語って聞かせているのであり、若者のほうは目を丸くしてそれに聞き入っている、という情景である。

 さて七度の航海の話を聞き終えてみると、どの航海においても救出されたときにはシンドバードはいつも一人であって、その不可思議な冒険を証言する第三者がいないではないか、本当にヤツはそんな見事な冒険をしてきたのであろうか、というような疑問が残ると言えば残る。ほら吹きの大金持ちが、純真な若い荷担ぎを相手にしょうもない与太話を語って聞かせてるだけじゃないのか、というような、アッラーをも怖れぬ疑いを口にしたくなる読者がいるとしても不思議ではなかろう。だが、それはまあいい。とにかくヤツがそう語っているのだから信じることにすればいいのである。しかし私には、一箇所だけどうしても納得のいかないところがある。シンドバードの不思議な冒険のすべてを信じるとしても、こればかりは嘘だろう、と思わずにいられないのである。

そして両人とも、(……)かの苦い死の訪れてくるまで、全き友情のうちに、快適のかぎりに暮したのでございました。(v4p544)

 船乗りシンドバードの物語の実質的な最後の一行。これが嘘に違いないと私は思うわけである。だってそうでしょう。船乗りシンドバードというのは、死ぬ思いを何度もしたはずなのに、「退屈した」というだけの理由でまた航海に出てしまうような男なのだぞ。きっとまた、そのうち退屈して航海に出たに違いないと考えるのが自然である。

 たぶんシンドバードは、また退屈して、第八の航海に出ていったのである。だがひとつだが違うのは、その航海から戻ってこなかったということだ。これまでだってもともとが運まかせの航海だし、七回の冒険であれこれと人の恨みも買っている。そこでさすがの強運もついに尽きて、シンドバードはこの第八の航海の途中で死ぬか、殺されるかしてしまったのである。シンドバードはついに第八の航海から戻らなかった。それゆえ第八の航海の物語は誰も知らない。後に残された荷担ぎシンドバードは、やむを得ず七回分の冒険譚をまとめたうえで、その末尾にハッピーエンドをつなげて後世に伝えた。

 それこそが、この無鉄砲な航海者シンドバードの物語の、真の結末だったのである(と私は思うわけである)。

ワンポイント・メモ

表現 歓楽を消え失せさせ、友情を断ち、宮殿を毀って墳墓を建てる者、かの苦い死。(v4p544)

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