千一夜物語 | 物語 | 船乗りシンドバードの第二話 | 親 | 前 | 次 |
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あらすじ
第一の航海から帰って豪勢な暮らしを送っていたシンドバードはやがてまた冒険の魅力にとりつかれ、商品を積んで船出する。だが、ある無人島に上陸してうっかり寝込んでしまっているうちに、船はシンドバードのことを忘れて出発してしまう。そこは怪鳥ロクの住む島だった。シンドバードはロクの足に体を結びつけて島を脱出するものの、たどり着いた先は高い山々に囲まれた、大蛇の住む荒れ地の島であった。シンドバードはこの島に転がっている金剛石を採りにきた商人に救われ、貴重な金剛石を無事バグダードへ持ち帰った。 解説
【知り合いの商人】 今度の航海にあたってシンドバードは「知り合いの商人たち」と同乗したことになっているが、実はこの連中こそとんだくわせものである。最初に上陸した無人島でシンドバードはうっかり寝入って船に戻りそこねてしまうのだが、これら知り合いの商人たちは、シンドバードが乗っていないのを忘れて、そのまま出航してしまうのだ。 目が覚めてみると、船客はもう一人も姿が見えず、船は私がいないのに誰一人気づかずに、出てしまっていた。(v4p441) これのいったいどこが仲間なのであろうか。 しかし置き去りにされたシンドバードはべつだん彼らを恨みに思ってはいないのであり、要するにかれらの世界においては、知り合いというものを当てにできることかくの如しなのである。ちなみに、この第二の航海の船長は次の第三の航海にも出てきてとんでもない発言をするので、よく憶えておくこと。 【岩だと思ったら大蛇】 その時、はじめ自分が黒い大きな岩と思ったものは、実はとぐろを巻いて卵を抱いている、恐ろしい大蛇だったということに気がついた。(v4p447) なーんじゃそりゃ。そんなもの、ふつう間違えるもんか。見間違えただけならともかく、シンドバードは今その岩を転がしてきて洞窟の入口をふさいだところなのである。そんなもん、触ったときにわからんのか。 【他力本願の宝捜し】 今回の航海でシンドバードがたどり着く島では貴重な金剛石が採れると言われている。だがそれは深い谷の底にあって人間はとうていそこまで降りていくことはできないので、人々は次のような手段で金剛石を採取している。 1.谷底に肉の塊を投げ落とす。すると金剛石が肉にめり込むであろう。 うまい工夫を考えたものとも思えるが、はっきり言ってしまうとただの運まかせの怠け者だ。肉に金剛石が食い込むかどうかも不確実なら、ロクがうまく肉を落としていくのかも不確実なわけであり、しかも怪鳥ロクは人も喰うというのに、そんな危険なものを利用してまでなぜ金剛石を取りたいのだろうか。しかも彼らは、引き上げた肉に運悪く金剛石がめりこんでいなかったりすると、両腕を天にあげて嘆いたりするのである。そんなに悔しいなら、なぜ、なんとか谷底に降りるとか、いながらにして谷底から引き上げるとか、そういう堅実な方法を考案しないのであろうか。 |
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