このページには、ゲームブック『血の島の地下迷宮(The Dungeon on Blood Island)』のネタバレが含まれます。
ゲーム展開について踏み込んだ内容に触れることがありますので、未プレイの方の閲覧に際してはご注意ください。
通過の要件 | 骨のサイコロ、お守り、竜玉、金のカギ |
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309 | [入口] | 〈392〉絵画の通廊 392 より |
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309 | [入口] | 〈51〉画家の部屋 51 より |
309 | [入口] | 〈51〉画家の部屋 167 より |
180 | [出口] | 〈45〉三匹の魔神 45 へ |
113 | [失敗] | 扉の罠の電流に打たれて死亡 |
214 | [失敗] | 島から追放されて失敗 |
最適ルート(通過チャート47) |
四つの錠前をもつ扉を背にして、竜使いが待ち受けている。先へ進むためには竜使いが課す三つの試験のすべてに合格しなければならず、失敗すれば即終了となる。
これは回避不能かつ最大の関門であり、これまでに入手してきたアイテムと手がかり、基本点の維持状態など、迷宮探索の成果が総決算的に問われることになる。
ゲームクリアに向けたルート設計のうえでも、このチャートをいかにして突破するかが、最も重要な考慮事項となろう。
第一の試験を受けるためには、[宝物]骨のサイコロを見つけている必要がある。ここまでたどり着いた冒険者なら、迷宮内で何回かは入手する機会があったはずだが、単に持っているだけでなく多く持っていることが重要だという事実がここで明らかになる。魔女の亡霊からのお礼の品を選ぶときに、「もう持っているからいいや」と思って候補からはずさなかっただろうか。
ここまでに[宝物]骨のサイコロの入手機会は三回あった。適切なルートをとれば三つとも入手することが可能である。
もし骨のサイコロを一つも持っていなければ、救済措置として、この場で1個だけ入手するチャンスが竜使いから与えられる。とはいえ[食料]を全部手放したうえにノーヒントの二択に成功しなければならず、しかも、どのみちサイコロ1個では第一の試験を突破できない公算が極めて高いため、ここで冒険失敗となる情勢が濃厚である。
次に、お守りを持っていればそれを差し出すことで、試験を有利にできるという申し出が竜使いからある。迷宮内には四つのお守りが隠されており、そのうち二つは必踏チャート〈116〉サンプの死で自然に入手できているはずである。あとの二つの入手も、それほど難しいわけではない。
第一の試験は、次のルールで行われる。
ここで、お守りを一個でも差し出すか、それとも差し出さない(持っていないか、持っていても言わない)かによって、パラグラフが分岐する。試験のルールそのものに違いはないのだが、勝負の実態が少し異なってくる。
実際にサイコロ三個を振ったときの出目の和(DDD)の期待値は 10.5 であるから、竜使いの出目が 9 に固定される前者のほうが、(ボーナス加算を別にしても)一般に有利である。お守りは他に使う機会もないので、持っているならここで全部差し出して構わない。
以上を整理すると、主人公の具体的な勝利条件と勝率は次のようになる。なお、大文字のDは自分のサイコロ、小文字のdddは竜使いのサイコロ三個を表すものとする。
骨の サイコロ |
差し出したお守りの数 | ||||
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0個 | 1個 | 2個 | 3個 | 4個 | |
1個 | D > ddd D-WIN-ddd(0) ≒ 0.012 |
D+1 > 9 (D ≥ 9) D-OM(9) = 0 |
D+2 > 9 (D ≥ 8) D-OM(8) = 0 |
D+3 > 9 (D ≥ 7) D-OM(7) = 0 |
D+4 > 9 (D ≥ 6) D-OM(6) ≒ 0.167 |
2個 | DD > ddd DD-WIN-ddd(0) ≒ 0.152 |
DD+1 > 9 (DD ≥ 9) DD-OM(9) ≒ 0.278 |
DD+2 > 9 (DD ≥ 8) DD-OM(8) ≒ 0.417 |
DD+3 > 9 (DD ≥ 7) DD-OM(7) ≒ 0.583 |
DD+4 > 9 (DD ≥ 6) DD-OM(6) ≒ 0.722 |
3個 | DDD > ddd DDD-WIN-ddd(0) ≒ 0.454 |
DDD+1 > 9 (DDD ≥ 9) DDD-OM(9) ≒ 0.741 |
DDD+2 > 9 (DDD ≥ 8) DDD-OM(8) ≒ 0.838 |
DDD+3 > 9 (DDD ≥ 7) DDD-OM(7) ≒ 0.907 |
DDD+4 > 9 (DDD ≥ 6) DDD-OM(6) ≒ 0.954 |
勝率の算出方法と式の意味については、[記事]確率論の基礎考察で詳しく説明している。
一見して、[宝物]骨のサイコロを3個すべて入手しておくことが極めて重要だとわかる。骨のサイコロが2個しかない場合、仮にお守りボーナスの最大値(+4)を得たとしても、72.2%の勝率しか得られない。運任せの一発勝負で失敗すれば即ゲームオーバーという状況を考えると、7割強というのは安心できる勝率とは言えないだろう。骨のサイコロ3個に加えて、お守りを3個以上(できれば4個)入手しておくことで勝率は9割を超え、はじめて合理的な攻略のていをなすようになる。(それでも絶対確実にはならないため、ここは本作随一のリスクポイントである。)
同時に、お守りを多く持っておくことの有効性も大きく、骨のサイコロが2個と3個の場合をそれぞれ横方向に比較すると、お守りが1個増えるごとに勝率が顕著に上昇していくことがわかる。結局、骨のサイコロもお守りも、可能な最大数(3個と4個)の入手を目指すのが肝要ということになろう。
なお、骨のサイコロが1個しかない場合には例外的状況がみられる。お守りが4個ある場合には16.7%の勝率がある一方、3個以下では理論的にいって勝利の可能性がなく、勝率は一律にゼロとなる。しかし、お守りを差し出さずにD対dddの勝負にもちこむと、逆にわずかながら勝利の可能性が生じる(1.2%)のである。
これは、お守りを一個でも差し出すと ddd = 9 の条件で固定されるため、「ddd > 9 となる心配がない代わりに、ddd < 9 となる幸運も期待できない」ことに由来する。したがって、自分のサイコロが1個しかなく、ddd = 9 では絶対に勝利できない状況(お守りが3個以下のとき)では、あえてお守りを差し出さず、1.2%の幸運に賭けてみるしかないこととなる。(もっとも、いずれにせよ現実的に勝利を期待できる状況ではない。)
第二の試験では、これまでに集めた竜玉の数を吟味される。竜玉は、竜の紋様が刻まれた金属の小球と描写されており、重要アイテムであることは入手時から容易に想像できた。ここでは怪物一体との戦闘に勝利しなければならないが、持っている竜玉の数に応じて戦うべき相手が変わるようになっている。つまり、竜玉の数が多いほど戦う相手が弱い怪物となって、撃破が容易になるのである。
ルールはこれだけで単純だが、ここで重要な点は、竜玉を4個全部集めることは必須ではないということである。さすがに竜玉の数がゼロだとゲームオーバーとなってしまうものの、1個でも持っていれば、試験突破の可能性はともかく残されていることになる。極端な話、赤竜にすら勝てる見込みがあるのならば、竜玉は1個持っているだけでもよい。このことはルート設計のうえで幾分かの自由を与えてくれる。
注目したいのは、竜玉の数が減るにしたがって強くなっていく怪物の推移において、[怪物]トカゲ男と[怪物]オークの勇士との間にやや大きな断絶が存在することである。技術点10のオークの勇士はやはり強敵と言わざるを得ないであろうが、技術点8のトカゲ男を撃破するのはそれほど困難ではあるまい。すなわち、竜玉は4個集めるのが理想的とはいえ、3個あるならば十分に許容範囲内とみてよいのである。このことが、最適ルートの設計に重要な示唆をもたらす。
というのも、竜玉のうち最後に手に入る[宝物]金の竜玉は、正しいパラグラフ選択をしたとしても入手失敗リスクを完全には払拭できないうえ、強力な武器である[宝物]ヴォーパルソードの入手と択一関係にあるからである。ヴォーパルソードの有用性はこの直後のチャート〈45〉三匹の魔神で明らかになるが、最後の戦闘を乗り切るためには、ほとんど必須級の武器だと言える。したがって、竜玉の収集を3個にとどめる代わりにヴォーパルソードを得ておくことが、ルート設計のうえで有力な選択肢となる。当データベースが推奨する[ルート]最適ルートも、この案を採っている。
第三の試験では、数字の刻印された四つの金のカギ(羅針盤のカギと総称される)が必要になる。金のカギを四個すべて入手していなければゲームオーバーが確定する。さらに、カギの使い方に関する断片的な情報を集めておかなければ試験の突破はおぼつかない。第三の試験は満たすべき条件が最も厳しく、その意味で最難関だと言えるが、準備さえできていれば試験の突破自体は確実で、運による失敗の不安はない。
第三の試験のために準備しておくべきものは次のとおりである。
金のカギに刻まれた数字はパラグラフジャンプに必要となるため、すべて把握しておかなければならない。同時に、それぞれの数字が何を意味しているのかは、[手がかり]羅針盤のカギの数字を得ていないとわからない。四つの金のカギは使う順序が決まっており、その順序は[手がかり]竜使いの扉を開けるにはで教えられるが、数字と意味の対応関係を知らなければその情報は役に立たない。最後に、カギを回す方向の選択を誤ると即死なので、[手がかり]カギを回す方向も知っていなくてはならない。
ちなみに、カギを使う順序を間違えてもパラグラフジャンプそのものは有効にできてしまう。順序のミスを炙り出す仕組みは、ゲームブックのシステムとしては設けられておらず、ジャンプ先の項目が辻褄の合わない文章になっているところから、プレイヤーが自分の誤りを察するしかない(一回目のカギを使ったつもりなのにジャンプ先で「次は三番目の錠」などと言われた場合)。
金のカギを正しい順序で使って、試験の突破が確実になってきた段階で、竜使いが予想外の行動を見せる。残っている最後のカギをひったくって、返して欲しければ手持ちの金貨を全部よこせと要求してくるのである。いわく「おまえが黄金宝珠を手に入れて富裕になると、そのいっぽうで私は、カーナス卿が出し渋るはした金に頼って生活していくしかないだろうから」だそうである。
このさき金貨を使う機会はないので、言われたとおり全財産を差し出して構わない。いよいよ最終目標が近づいて、もう金貨など必要ないという、演出的な意味の展開であろう。でも金貨すべてといったって、主人公が持ってるのはたかだか3~4枚だよ? 神秘的な雰囲気だった竜使いが、いきなりセコい人物になりさがるのがちょっと可笑しい。
しかも、扉を出た先には三匹の魔神が待っているからうまくやれよ、などと、とんでもないことを今ごろ言い出す。そういうことは早く言ってよ。「言ったかな? いや、言ってなかったな。すまん、ど忘れしていた」じゃないんだよ。絶対わざと黙ってただろ。
試験に合格して竜使いの間を出ると、迷宮の探検もついに最深部に達し、三匹の魔神との苛酷な三連戦を迎える。
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