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詩 - ミュッセ

Les Nuits, 1835-1837
『五月の夜』(1835)、『十二月の夜』(1835)、『八月の夜』(1836)、『十月の夜』(1837)の四編からなる連詩。
[あらすじ] 『五月の夜』では憂愁に沈む詩人に対して、苦悩と絶望こそ詩の源泉であるとミューズが説く。『十二月の夜』は不幸に遭ったとき常に詩人の傍らにあった「孤独」の姿を歌い、『八月の夜』では裏切られた愛の恨みが切々と嘆じられる。そして『十月の夜』で、詩人の破れた恋の痛みは瑞々しい詩才へと昇華される。
たとへ苦悩にをかされたとて/声ひそめてばかりゐてはならぬのだ。/世にもいたましい、絶望こめた歌こそこよない歌。
(『五月の夜』、翻訳文献5、142ページ)
愛せよ、さらば甦らん。咲き出るため花となれ。/苦悩せよ、しかも、なほ苦悩せよ。/愛せ、しかも、なほたゆることなく愛せ。
(『八月の夜』、翻訳文献5、171-172ページ)
おいで。そして、わたしの戀人を醒し、/庭の花をつんでおくれ。/睡眠のとばりから、/不滅の自然が現れるのを見においで。/これから曙の陽光を受けて、自然とともに/わたし達も、また甦るのだ。
(『十月の夜』、翻訳文献5、193ページ)
心理 事件
それぞれの月は発表の時期によってつけたものらしく、詩の内容と密接な関係はない。『十二月の夜』を除いて、詩人とミューズとの対話という形をとっている。四編あわせると相当な長さになるが、それぞれの月で主題が微妙に異なるのが面白く、また感傷的な雰囲気はかなり心地よい。
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DATA:『夜』

思い出
Souvenir, 1841
われは見ぬ、永遠の愛をわれのささぐる愛しき女が、/おのづと白き墓、生ける墓となり了せしを。/その上に、埃となりて、/今は亡き、われらの戀、
深き夜のなか、相ともに胸の上にやさしく揺りし、/あはれなるわれらの戀はただよへり。
(翻訳文献5、79ページ)
げに、笑みつつも、生なき存在のこの別離こそ、/まこと世にも恐ろしくあはれなりき。/さればとて、かくなりしをいかにせん、/さればとて、わが愛せしことに變りありや。
(翻訳文献5、81ページ)
心理 事件
終わってしまった恋の追憶を痛切な詩情をもって嘆ずる。恋人と死別するよりも、昔の恋人の姿を生きながら見ることのより大きな不幸と甘美さを切々と歌う本編は、ミュッセ的感傷の極致といえよう。……というように突き放して論評しない限り、詩の雰囲気に呑まれて何も言えなくなってしまいそうである。その意味では、まぎれもない傑作である。
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DATA:『思い出』

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