ブカル将軍の撃退[詩節112-121] |
エル・シードの軍勢とともにバレンシアで暮らすカリオーン公子兄弟は、獅子脱走事件のとき臆病なふるまいにより失笑をかい、面目を失う。折しもブカル将軍が率いるモロッコ勢5万がバレンシアを包囲し、エル・シードらはこれを迎え撃つが、体面のため先鋒を申し出た公子たちは敵将アラドラーフに怖じ気づいてあっけなく逃走する。ペドロ・ベルムーデスらの活躍によりバレンシア勢が勝利し、エル・シードはブカル将軍を討ちとって名剣ティソーンを獲得する。戦利品は騎馬一人あたり銀600マルコにものぼり、公子たちも二人で5000マルコの割り当てを得る。 |
エル・シードの第七の戦い
エル・シード、名剣ティソーンを得る |
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公子たちの旅路[詩節122-128] |
エル・シードの婿である公子たちは折りにつけ高慢な態度を見せるが、実力が伴わないためにエル・シードの臣下たちからは軽蔑されることになり、屈辱を感じる。逆恨みした公子たちはエル・シードの娘を利用して報復を画策する。 公子たちは、結納として贈った土地を見せるため、妻たちをカリオーンへ連れ帰ることを申し出る。エル・シードはこれを許可し、持参金として金子3000マルコのほか、名剣コラーダ・名剣ティソーンを公子たちに与え、フェレス・ムニョースを付き添いにつけて二組の夫婦を送り出す。 公子たち一行は故郷カリオーンへ向けて旅立つ。途中モリーナでエル・シードの友人アベンガルボーンが同行する。アベンガルボーンの富に目がくらんだ公子たちは彼を暗殺しようとするが失敗し、その憤激をかう。やがて一行はコルペスの森に到着する。 |
名剣コラーダ・名剣ティソーン、カリオーンの公子たちに贈られる |
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コルペスの森の屈辱[詩節128-131] |
コルペスの森にて、バレンシアで受けた屈辱に報復するため、公子たちはそれぞれの妻をとつぜん離縁する。彼らは妻たちを薄着姿にして打擲し、森の中に置き去りにして立ち去る。付き添いのフェレス・ムニョースが危うく二人を救出し、サン・エステーバンの町に住むエル・シードの旧臣の保護に委ねる。 娘たちの悲運を聞いたエル・シードによって派遣されたミナーヤ率いる200騎は、サン・エステーバンで無事、息女たちと再会する。 |
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宮廷会議(コルテス)前夜[詩節132-136] |
息女たちはバレンシアへ帰還する。エル・シードは公子たちに傷つけられた名誉を回復するため、公開裁判の開廷をドン・アルフォンソ王に願い出ることとし、使者ムニョ・グスティオースを王の滞在地サアグーンへ派遣する。王は宮廷会議(コルテス)をトレードで開催することに決し、臣下たちに召集をかける。 いっぽうカリオーンの公子たちはエル・シードと反目する大貴族ドン・ガルシーア伯と結託し、宮廷会議を乗り切ることを企んでいた。コルテスの期日が迫り、エル・シードは100騎を従えてトレードに到着する。 |
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宮廷会議(コルテス)[詩節137-150] |
ドン・アルフォンソ王の面前で宮廷会議が開かれる。エル・シードは離婚に伴い、かつてカリオーンの公子たちに贈った二本の名剣の返還を求め、認められる。また持参金3000マルコの返還も要求するが、浪費家である公子たちはすでにそれを使い果たしてしまっていた。エル・シードは傷つけられた名誉の回復のため公子たちとの決闘裁判をもとめるが、ドン・ガルシーア伯がこれに抗弁し、会議は紛糾する。 ペドロ・ベルムーデスが、対アラドラーフ戦や獅子脱走事件の際の公子たちのふるまいを暴露したことから侮辱と挑発が起こり、カリオーンの公子三兄弟とエル・シードの臣下三人との間に、三対三の決闘が行われることとなる。このとき、ナバーラとアラゴーンの各王子がエル・シードの息女たちに求婚し、二人の娘の名誉は回復される。 |
名剣コラーダ、マルティーン・アントリーネスに与えられる
名剣ティソーン、ペドロ・ベルムーデスに与えられる |
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決闘裁判[詩節150-152] |
宮廷会議の三週間後、カリオーンの沃野にて決闘が行われる。ペドロ・ベルムーデスはカリオーンの公子三男フェルナンドと戦い、降参させる。マルティーン・アントリーネスはカリオーンの公子次男ディエーゴと戦い、逃走させる。ムニョ・グスティオースはカリオーンの公子長男アンスールと戦い、重傷を与えて降参させる。かくして決闘裁判はエル・シード側の勝利に終わり、エル・シードは損なわれた名誉を回復した。二人の息女の新たな婚礼が盛大に執り行われ、エル・シードの栄光はスペイン中に輝きわたる。 |
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