| 千一夜物語 マルドリュス版|ヅームルッドとアリシャール |
女奴隷ヅームルッドは恋人アリシャールのもとへ戻るため幾多の苦難を乗り越える。
| 枠深度 | 2 |
|---|---|
| 話し手 | シャハラザード |
| 聞き手 | シャハリヤール |
| 夜々 | 第316夜-第331夜 |
| 相当範囲 | 第4巻pp.548-625 |
| 千一夜物語(最外枠) |
| 美しきヅームルッドと「栄光」の息子アリシャールとの物語 |
作者が語る「千一夜物語」の、
作中人物であるシャハラザードが語る。
ホラーサーンの国の富裕な商人「栄光」の息子アリシャールは、父の死にあたって節制をこころがけるよう忠告を受けるが、やがて誘惑に負けて財産を浪費し一文無しになってしまう。貧窮したアリシャールがある日市場の広場に立ち寄ると、そこでは白人の女奴隷の競売がおこなわれていた。ヅームルッドという名のその女奴隷は、所有者の意向により、彼女自身が同意した者に対してでなければ譲り渡されないのであった。教養あふれるヅームルッドはみごとな詩を即吟して気に入らない候補者を退けていたが、アリシャールを見て気に入り、彼が一文無しだと知るとひそかに金を渡して、アリシャールに自分を競り落とさせる。こうしてヅームルッドはアリシャールの妻となり、生活を始めた。
才能にあふれるヅームルッドは見事な垂れ幕を織ってアリシャールに売りにいかせたので、二人はたちまち豊かになった。しかし結婚の一年後、顔見知りでない商人とは取引をするなというヅームルッドの忠告を破って、アリシャールは通りすがりのナザレト人に壁掛けを倍額で売ってしまう。実はその男バルスームは、かつてヅームルッドの競落を拒まれた男ラシデッディーンの弟であり、言葉巧みにアリシャールの家に入り込むと彼に薬を盛って眠らせ、ヅームルッドを誘拐していってしまう。ラシデッディーンはヅームルッドに欲情しており、キリスト教への改宗を迫ってヅームルッドを拷問にかける。
いっぽう妻をさらわれたことを知ったアリシャールは絶望していた。そのときたまたま出会った親切な老婆が、ヅームルッドの居場所を探り出して脱出の手はずまで整えてくれたのだが、アリシャールはちょうどその時間に待ち合わせの場所でうっかり眠り込んでしまう。そこに通りかかった盗賊ジワーンがアリシャールの衣服を奪い、折しもラシデッディーンの邸を抜け出してきたヅームルッドを勘違いさせて連れ去る。ジワーンはヅームルッドを盗賊団の隠れ家の岩山へ連れ込み、盗賊団全員でなぐさむために仲間を呼びに行った。しかしヅームルッドは機転を利かせて見張りの老婆をだまし、隠れ家から逃げ出す。
逃走のため男装したヅームルッドが街道を通ってある大きな都に近づくと、人々が歓呼をもって彼女を迎えた。その都では王が死ぬと、その後その街道を最初に通った者を新たな王として迎えるならわしだったのだ。ヅームルッドは高貴なトルコ人を装ってその都の王の座につき、一年のあいだ善政をしいた。やがてヅームルッドは夫アリシャールを探し出すために、毎月すべての国民を招いて離宮で食事をさせ、その機会に人々を仔細に検分することを思いつく。最初の月、ヅームルッドは食事に来ていたバルスームを見つけてこれを問詰し、死刑に処す。翌月同じようにしてジワーンを、その翌月にはラシデッディーンを見出して処刑した。その次の月、招いた人々の中にヅームルッドはアリシャールの姿を見つける。アリシャールはヅームルッドを探す旅に出てこの都を訪れていたのだ。ヅームルッドはその夜アリシャールを寝室に招いて正体を明かし、歓喜のうちに一夜を過ごす。翌日、ヅームルッドは王座を譲り、アリシャールとともにホラーサーンへ帰還した。
| 死人 | 表現 | 湿りたる綿。 | 第4巻p.557 |
|---|---|---|---|
| 振られた夜 | 表現 | 冬の一夜。 | 第4巻p.559 |
| ヅームルッドの才能 | 挿話 | 詩の即吟、詩賦を作る、七種の異なった字体が書ける、刺繍や絹を織る技術。 | 第4巻p.563 |
| 男女の交わり | 表現 | 混り気のない歓楽と快活な嬉戯。 | 第4巻p.567 |
| 男女の交わり | 表現 | わしに抱かれて横になって、わしの闘う勇猛さを味わう。 | 第4巻p.577 |
| ヅームルッドの拷問 | 挿話 | キリスト教徒ラシデッディーンはヅームルッドを改宗させようとして鞭で打つ。 | 第4巻p.578 |
| 嘆き | 表現 | 二つの礫を拾って、これを一つずつ両方の手に持ち、(……)その礫でわれとわが胸を叩きながら、叫びつづける。 | 第4巻p.579 |
| 男女の交わり | 表現 | お前の上に乗って、ご承知のものの間を転げ廻って、あいつを朝までぐるぐる廻す。 | 第4巻p.585 |
| 男女の交わり | 表現 | ちょうど船が海の底に沈むまで水が船を満たすように、私を満たす。 | 第4巻p.588 |
| 王位継承のならわし | 挿話 | その都では王が男子を残さず崩御したときは、都へつづく街道の最初の通行人を新たな王とする。 | 第4巻p.592 |
| キスク | 知識 | 第4巻p.596 | |
| 王の占い | 挿話 | ヅームルッドは変装して王となった後、かつて自分を迫害した者たちの正体を次々と言い当て、人々を驚かす。 | 第4巻p.599 |
| ビスミラーヒ | 知識 | 第4巻p.613 | |
| 女の肉体 | 表現 | 玉座のように高く、雛鶏のように油が乗り、鳩の胸よりも熱く、情熱に燃えた心よりも燃えている、ある円いもの。 | 第4巻p.621 |
| 男女の交わり | 表現 | 羊飼いの杖を頭陀袋のなかに突っ込み、小道の狭さも気にかけずに、敢然として前へ進む。 | 第4巻p.622 |
| 耽読古典ライブラリ ≫ 千一夜物語 マルドリュス版 ≫ ヅームルッドとアリシャール |