フランス文学記事|中世フランス文学史

中世フランス文学史

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 カエサルのゴール征服に伴う俗ラテン語の登場と、ゲルマン民族の侵入によるゲルマン語の影響を受けて、フランス語の原型となるロマンス語が成立する。さらに北仏ロマンス方言であったオイル語が分化し、こうして、こんにちに至るフランス語の歴史が始まった。

 中世封建社会の最盛期からその成熟と瓦解に至る、約四世紀間にわたって、フランス語による最初の文学表現が始まる。そこには、後世諸世紀におけるフランス文学の原点となる多様な精神が息づいているのである。

フランス語の成立

 中世とは世界史上、西ローマ帝国崩壊(476)からイタリア戦争の開始(1494)までをいうのが普通であるが、フランス文学史においては12世紀から15世紀を中世(Moyen Age)と呼ぶ。なぜなら、ガリア北部のロマンス語方言であったオイル語から古フランス語が成立したのが12世紀であり、1100年以前にはフランス語で書かれた文学作品がほとんどなかったからである。フランス語で書かれた最初の文献として、『ストラスブールの誓約書』(842)がある。

前58 カエサルのゴール征服
俗ラテン語(latin vulgaire)の成立
400 ゲルマン民族の侵入、フランクの支配
ゲルマン語の混入、発音や文法の変化、地域ごとの分化
5-10世紀に民衆が日常語として用いた俗ラテン語=ロマンス語(roman)
980
ガリア南部のロマンス語方言群: オク語(langue d'oc)
ガリア北部のロマンス語方言群: オイル語(langue d'oïl)=古フランス語
1350
中代フランス語
1600
近代フランス語

中世前期(12・13世紀)

 中世前期の文学作品は、次のように分類される。(1)聖者伝…聖職者が信者たちを教化するために、ラテン語から古フランス語に書き直した韻文の物語。(2)叙事詩…十字軍遠征に伴う騎士道精神から生まれ、国家と宗教の権威を発揚することをめざした詩。特に武勲詩(Chansons de geste)が発展した。(3)宮廷風文学…カペー王朝と宮廷の登場を背景として、ケルト伝説やプロヴァンス文化の影響のもとに成立した文学。(4)町人の文学…12-13世紀の商業と町人の台頭を受けて現れた、陽気で人間臭い卑俗な文学。フランス文学のゴーロワ精神(esprit gaulois)の源流とされる。(5)教訓文学…中世文化の最盛期に道徳的教化を意図して書かれた文学。

聖者伝 『聖ユーラリー』
叙事詩 『ロランの歌』
宮廷風文学 『円卓物語』|『トリスタン物語』|『聖杯物語』|『オーカッサンとニコレット』
町人の文学 『ファブリオ』『狐物語』
教訓文学 『薔薇物語(正編)』『薔薇物語(続編)』

中世後期(14・15世紀)

 イギリスとの百年戦争(Guerre de Cent Ans, 1337-1453)、エティエンヌ・マルセルの乱、ジャックリーの乱などにより、次第に社会不安と貧困がフランス社会を覆う。こうした状況を反映して、中世後期の文学では陰惨なレアリスムの傾向が強まる。演劇では奇蹟劇(miracles)聖史劇(mystères)のほか喜劇が発達し、教訓劇(moralité)、阿呆劇(soties)、笑劇(farce)といった形式を生んだ。また作詩法を改革したギョーム・ド・マショーや、中世最大の詩人としてフランソワ・ヴィヨンがいる。

演劇 グレバン(聖史劇)|ミシェル(聖史劇)|『ピエール・パトラン先生』(笑劇)
物語 『結婚十五の歓び』『若きジャン・ド・サントレの物語』『新百物語』
叙事詩 マショークリスチーヌ・ド・ピザンシャルル・ドルレアンヴィヨン

参考文献

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