SYUGO.COMカテゴリマップ
ゾラ展見学記 メダン記念館 ゾラの墓 双書の風景
特集トップへ 書評 講読ノート データベース

ゾラ展2002

ゾラ没後100年にあたり、パリのフランソワ・ミッテラン国立図書館において、2002年10月から2003年1月までゾラ展(L'Exposition de Zola)が開かれた。
展示は「執筆/修業」、「描写/分析」、「発言/空想」の三部で構成され、「執筆」の部(1871-1897)では第二帝政時代の習作の時期を、「描写」の部(1871-1897)では『ルーゴン・マッカール双書』と『三都市物語』の時期を、そして「発言」の部(1898-1902)ではドレフュス事件と晩年の理想主義の時期を扱う。出版物、写真、絵画、デッサン、版画など400点近い展示を通じて、時代の活動的な証人であったゾラの作品と社会参加に迫り、人間として・作家としてのゾラの姿を浮かび上がらせようとする。

ゾラ展・展示見取図
名称 ゾラ展(L'Exposition de Zola)
会場 フランス国立図書館(フランソワ・ミッテラン館)大回廊東ホール
(Bibliothèque Nationale de France (Bibliothèque François Mitterrand) Grande galerie Hall Est)
期間 2002/10/17 - 2003/01/19 (終了)
開館時間 月曜から金曜の10時から19時まで、日曜の12時から19時まで(祝祭日を除く)
サイト フランス国立図書館
見学料金 5ユーロ/1人、割引料金4ユーロ/1人
交通 メトロ14番線・RER-C線のビブリオテック・フランソワ・ミッテラン(Bibliothèque François Mitterrand)駅で降り、徒歩5分。向き合って建っている四つの鉤型の建物が図書館。非常に目立つので見落とす心配はないが入口に着くまでにけっこう歩く。東棟はビブリオテック駅から見て手前の二棟。
2003年1月現在

また同じ時期に、「ボヌール・デ・ダーム百貨店―作品をめぐって」と題する小展が、同じくフランソワ・ミッテラン国立図書館で開かれた。
ルーゴン・マッカール双書第11巻『ボヌール・デ・ダーム百貨店』に焦点を絞りつつ、フィクションとしての作品の内容紹介と、その背景となった19世紀パリの現実(オスマンのパリ改造計画や大規模デパートの発展)とを対照させるという趣旨に基づいて豊富な資料を展示するほか、会場の一画ではゾラの映画化作品も上映している。全体的にゾラ展よりも少しやさしめの内容となっている。

ボヌール・デ・ダーム百貨店・展示見取図
名称 ボヌール・デ・ダーム百貨店―作品をめぐって
(Au Bonheur des Dames - autour d'une oeuvre)
会場 フランス国立図書館(フランソワ・ミッテラン館)小回廊東ホール
(Bibliothèque Nationale de France (Bibliothèque François Mitterrand) Petite galerie Hall Est)
期間 2002/10/18 - 2003/04/13 (終了)
開館時間 月曜から金曜の10時から19時まで、日曜の12時から19時まで(祝祭日を除く)
見学料金 無料
交通 ゾラ展と同じ。
2003年1月現在

私の場合

 今回の旅行の最大の目的であったゾラ展。ほかのスポットはともかくこちらは期間が終わるともう見るチャンスがないので、観光初日の午前中に予定を入れておいた。もし必要なら翌日また来ようと思っていたのである。10時の開場を待つようにしてメトロのビブリオテック駅を降り、図書館に向かう。なお、方向感覚に自信のあったはずの私は今度のパリ滞在で道に迷いまくって相当へこむことになるのだが、この時点ではまだそんなことは思いもよらず、とりあえず順調に移動できていたのであった。
 さて、交差点で信号を待っていると中年のフランス女性にとつぜん呼び止められて、なぜかいきなりフランス語で道を聞かれる。かなたにそびえ立っている図書館を指さして"Grande Bibliothèque est ça-là?"(「図書館はあれなの?」)と言ったのはわかったので、そうだと教えたんだけど、後にして思うとなぜフランス人が、明らかに外国人のオレにフランス語で道を聞こうという気になったのだろうか。言葉が通じないという可能性を考えなかったのであろうか(まあ通じたからいいんだけど)。観光初日にしていきなりビビる経験であった。ちなみに彼女の目的もゾラ展だったらしく、その後会場でゾラの手稿を食い入るように見つめているところを見かけた。
 ゾラ展の会場になっている東棟のあたりを工事していたせいで私は入口を見落としたらしく、気づいたら西棟のほうまで回り込んでしまっている。とりあえず西棟のほうから東の二棟の遠景を写真に収めて(右図)、いざ東棟へ。デッキと地上とをつなぐエスカレーターのうち昇りのほうが、なぜか動いていない。
フランソワ・ミッテラン国立図書館

ゾラ展・構成
 さて、図書館に入るまではまずまず順調だったのだが、入ってからがわかりにくかった。というよりこのゾラ展、そもそも外国人観光客をあまり見込んでいないらしくて、入場するための手順(というほどのこともないんだけど)が外国人にとって親切じゃないのである。
 まず荷物チェックを受けて館内に入る。ゾラ展といっても日常業務をしている国立図書館の一画を使ってやっているだけなのでまず会場を見つけないといけないのだが、ふつうに図書館を利用しに来ている来館者のほうが多くて、みんな入館するとてんでばらばらに散っていってしまうため、「とりあえず人の流れていく方についていけばわかるだろう」という期待は早くも崩れる。図書館はものすごく広くていちど迷うと三時間くらい出てこれなくなりそうな気がしたので早々に場所を訊いて、会場はすぐにわかる。
 ところが、問題はそれからである。入ろうとすると入場券(ticket)が必要だと入口の女性が言うので、じゃあ買いたいんだけど、と言うと「ここじゃ売ってない」。そうしてチケ売り場の場所を説明してくれるんだけど……、早口でぜんぜんわからない。わからない顔をしていると、身振りつきでもう一回説明してくれるが、やっぱりわからない。唯一、"Tu ne comprends pas."(「あんたわかってないね」)と言ったところだけがわかった、という、まったく意味のないわかり方をしている私なのであった。
 それから何度も教えてもらって、なんとかわかった(というか、だんだん気まずくなってきたのでもうわかったことにした)ので、とりあえず指さされた方へ行ってみる。このときの私の混乱というのは要するに、一生懸命聞き取ってみると女性が左のほうを指さしながらしきりに"à droite"(右へ行け)と言うので、いったいなんのこっちゃ、ということだったのだが、後でわかったところでは「まず左へ進むと窓口が一列に並んでおるから、しかるのち、むかって一番右側の窓口で入場券を買うがよい」という意味だったのであった。それ以外の窓口は、開いているんだけどゾラ展のチケ売り場ではないんだそうである。(だが断じてそんなことはどこにも書いてないので、オレにわかるわけがなかった。)
 やっと窓口を探しあててチケをくれと言うと、受付の男性がまた何か聞いてくるが、これもよく聞き取れない。もう何でもいいから早く入れてくれよ、という気分で泣きそうになってくるが、また何度も繰り返してもらって、やっと、étudiant(学生)かどうか聞いていることがわかる。
 そしてようやく入場券の購入をクリア。入場するだけでもうへとへとである。

 ゾラ展の会場自体はそれほど広くないのだが、展示の質は非常に充実していた。ゾラの達筆な手書き原稿や書簡を眺めながら至福の時を過ごす。個人的に言って特に興味深かったのは、ルーゴン・マッカール構想段階での家系樹の下書きが、いろんなバージョンで展示してあったこと。一族の各人物を円グラフで表して、誰の血が何割入っているかを色鉛筆で丁寧に塗り分けた家系樹なんてものを、私は今回初めて知った。ゾラの手書き原稿や書簡からは、総じてゾラの几帳面さが窺える。平日の午前中という時間帯にしては、けっこう見学客が多いのではないかという気がした。
 ゾラ展見学ののち引き続いて、すぐ隣でやっていた「ボヌール・デ・ダーム百貨店」の展示を見る。『ボヌール・デ・ダーム百貨店』の内容をビジュアルに紹介したわかりやすい展示内容で、高校生とおぼしきグループがいくつか訪れていた。
 かれこれ午後1時ごろまで見学してから、名残惜しいけれども退出。ゾラ展のカタログ(右図)はA4よりひとまわり大きいサイズで全254ページ。49ユーロもした。
ゾラ展・カタログ

ホーム特集ゾラ展見学記 [ ゾラ展2002 | メダン記念館 | ゾラの墓 | 双書の風景 ]ページプロパティ
ページの一番上に戻ります。 ひとつ上の階層に戻ります。