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愛と偶然との戯れ

繊細な恋愛心理にふれた18世紀の名作喜劇。
Pierre Charlet de Chamblain de Marivaux "Le Jeu de l'amour et du hasard", 1730
マリヴォー『愛と偶然との戯れ』(進藤誠一訳岩波文庫1935年)


【1】 18世紀フランスの喜劇作家マリヴォーの代表作。
 この喜劇の最も面白いところは、結婚を控えた娘が相手の人物を考量するために侍女と身分を入れ替える、という着想の奇抜さであろう。しかも、相手の男も同じことを考えていたため、事態はますます紛糾してこんがらがっていくのである。

 人に教えられて初めて気がついたのだが、このアイデアについては、マリヴォーが『千一夜物語』から影響を受けたのかも知れない、と私は考えている。『千一夜物語』にも同じような話(ただし、身分の入れ替えは女の方だけ)が出てくるのである。
 調べてみたところ、1704年から1717年にかけて、アントワーヌ・ガランによって『千一夜物語』のはじめての仏訳が出版されている。この期間にマリヴォーは16歳から29歳。そして本書『愛と偶然との戯れ』は1738年、マリヴォー42歳。おそらく、マリヴォーは「千一夜」を読んでいた、と考えていいのではあるまいか。興味をそそられるところである。

【2】 劇そのものは非常にテンポがよく展開していくが、特にマリオとシルヴィアの兄妹のやりとりが私には楽しかった。こういう気の利いたかけ合いのできる兄妹には、憧れてしまう。リゼットとアルルキャンの侍女・従僕カップルも、ある意味では磊落で、好感が持てる。この劇の結語、アルルキャンがリゼットに語った次の言葉は、民衆のたくましさを感じさせて、痛快である。

 お互いの本性を知るまでは、あんたの持参金のほうが、あんたよりえらかったが、今ではあんたのほうが持参金よりえらいだけのことさ。(102ページ)

ノート
字数:660
初稿:2000/07/06
初掲:2000/07/09
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DATA:マリヴォー
DATA:『愛と偶然との戯れ』
岩波書店
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