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病は気から

医者嫌いモリエールの本領が発揮された皮肉な喜劇。
Molière "Le Malade Imaginaire", 1673
モリエール『病は気から』(鈴木力衛訳岩波文庫1970年)


【1】 この劇でモリエールが風刺しているものをまとめると、次の三つになるのではないかと思う。

  1. 医学を盲信し薬に頼りきりになる男、および、医者・医学。
  2. 娘に打算的な結婚をさせようとする父親。
  3. 若い女を後妻に迎えた男、および、それを利用して財産をせしめようとする女。

 モリエールの医者嫌いは有名であるが、この劇に限らず、モリエールの風刺するものにはいくつか類型があって、上記の三つも、その代表をなすのではないだろうか。たとえば、『守銭奴』のアルパゴンは2.と3.にあてはまるだろう。
 しかしなんと言っても、本書の場合、際立っているのは医者に対する皮肉である。そもそも、劇に登場する医者のトーマ=ディアフォワリュス自身が相当ピントのはずれたおかしな人物として描かれているのだが、かれやその他の医者に対する皮肉がいかにも痛烈なのである。

アルガン:ピュルゴン先生は、預けた金の利子だけで、年にたっぷり八千リーヴルものみいりのあるかたなんだぞ。
トワネット:よっぽど人を殺したんでございましょうね、それほど大金持になるためには。(24ページ)

クレアント:このかたはすぐれた医者であるばかりでなく、堂々たる雄弁家でいらっしゃる。こういう先生の患者になったら、さぞ気持のよいことでしょうな。
トワネット:ほんとうに。演説がお上手なように、治療もお上手でしたら、それこそすばらしいと思いますわ。(52ページ)

ベラルド:患者の大部分は、病気のために死ぬんじゃなく、薬のために死ぬんです。(87ページ)

 特に、劇中でも随一の活躍をする女中トワネットの発言が光っている。モリエールの喜劇では、もったいぶった貴族よりもこうした庶民階級のほうが元気で生き生きとしている。

ノート
字数:720
初稿:2000/07/05
初掲:2000/07/09
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DATA:モリエール
DATA:『病は気から』
岩波書店
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