医者嫌いモリエールの本領が発揮された皮肉な喜劇。
"Le Malade Imaginaire", 1673
『病は気から』(鈴木力衛訳、岩波文庫、1970年)
【1】 この劇でモリエールが風刺しているものをまとめると、次の三つになるのではないかと思う。
モリエールの医者嫌いは有名であるが、この劇に限らず、モリエールの風刺するものにはいくつか類型があって、上記の三つも、その代表をなすのではないだろうか。たとえば、『守銭奴』のアルパゴンは2.と3.にあてはまるだろう。 アルガン:ピュルゴン先生は、預けた金の利子だけで、年にたっぷり八千リーヴルものみいりのあるかたなんだぞ。 クレアント:このかたはすぐれた医者であるばかりでなく、堂々たる雄弁家でいらっしゃる。こういう先生の患者になったら、さぞ気持のよいことでしょうな。 ベラルド:患者の大部分は、病気のために死ぬんじゃなく、薬のために死ぬんです。(87ページ) 特に、劇中でも随一の活躍をする女中トワネットの発言が光っている。モリエールの喜劇では、もったいぶった貴族よりもこうした庶民階級のほうが元気で生き生きとしている。 |
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