SYUGO.COMカテゴリマップ
ロランの歌 あらすじ 戦争1 戦争2 人物総覧 データ 結論
特集 書評 講読ノートトップへ データベース

重要人物紹介

フランス

シャルル
フランスの王。世界史上も有名な、フランクのカール大帝(シャルルマーニュ)である。愛剣ジョワイユーズ、愛馬タンサンドール。ビテルヌの楯を頸から下げている。
この人こそ英雄であるが、評定で配下の意見が分かれて迷ったり、いろいろと暗示的な予知夢に襲われたり、甥の身を気づかいながら援軍に向かったり、戦死した武将を惜しんで嘆いたり、裏切り者の裁きをどうつけるかで困ったりと、いかにも王者らしい苦悩をにじませる。対アラビア戦争で、敵の総督バリガンと一騎打ちをするのが、唯一の華々しい活躍といえようか。
歌の最後の最後で、休む間もなく新たな出兵の要請を受けて、がっくり落ち込むところが悲しい。

ロラン
シャルルの甥の勇将。愛馬ヴェイヤンティフにまたがり、名剣デュランダルを佩く、この歌の主人公。
マルシルの恭順の使者を信ぜず、徹底的な征服を主張。和平が成ってシャルルが撤退するときには、ガヌロンの計略により殿軍に指名される。これが彼の悲劇の始まりであった。ロンスヴォーの圧倒的に不利な戦いにて獅子奮迅の働きをし、力つきて戦死する。
しかし、忠臣で勇敢なのは認めるとしても、果たしてロランは名将なのであろうか。押し寄せるサラゴスの大軍を見ても、必要ないとかみっともないとか、あれこれ理由をつけて援軍を呼ぼうとしない。そのくせ自分が死にそうになるとオリヴィエに弱音を吐いて、オリヴィエに、たとえ生き残ったとしても妹はやらんぞ、などと怒られている。
要するに、単なる騎士道一徹の頑固者ではないのか、という気もする。

ガヌロン
シャルル麾下の武将。愛剣ミュルグレス、愛馬タシュブラン。
マルシルの恭順の使者を受けた後のシャルル王の評定において、マルシルを信頼して和平を結ぶことを主張。その提言はいちおう受け容れられるものの、ロランの発言によりその和平の使者という危険な役割に任命され、ロランを恨む。そして保身のため、使者に赴いた先でマルシル王と通じ、ロランを陥れる計略をめぐらす。
この歌の中では随一の悪役とされているが、事情をよく聞いてみれば結構人間味のある武将である。最後の裁きの場でも、それなりに筋の通った弁明をしている。しかし、各国文学の古典などでは、裏切り者の代名詞としてその名が定着してしまっているという、気の毒な人物。

オリヴィエ
ロランの親友でシャルル12臣将のひとり。妹オードはロランの婚約者である。愛剣オートクレール。
ロランと深く信頼し合っており、よき戦友にして助言者。『イリアス』のアキレウスとパトロクロスのような、男同士の親密な友情を感じさせる。特に、ロランがどちらかというと勇猛一辺倒なのに対し、オリヴィエは冷静で的確な判断をする知将のイメージが強い。サラセン軍を最初に見たときに、援軍を呼ぶ角笛を吹くようにとのオリヴィエの提案にロランが従っていれば、ロンスヴォーの大敗はなかったのではなかろうか。
ロンスヴォーの戦いでは大活躍をする。倒した敵将の数は、実はロランより上である。
スペイン将マルガニスに致命傷を受け、相手を倒しはしたものの、自分もそのまま死んでゆく。

チュルパン
シャルル麾下の大司教。司教といっても、乱戦の中で剣を振り回して敵将を斬りまくるという、立派な武将である。愛剣はアルマス。
司教だからキリストの教えを説く人のはずだが、スペイン人は異教徒だから殺してもいいらしい。特定の敵将に討ち取られはしなかったが、数々の負傷により倒れ、「体中より臓腑出でて……額の上より、脳漿たぎり出で……」という凄惨な最期をとげる。神の教えを説く人なのに殺しまくったりしたからばちがあたったんじゃないの、とツッコミを入れたくなるところである。

オード
出番は少ないが、わずか二人しか出てこない女性のうちのひとりなので取りあげておこう。ロランの婚約者でオリヴィエの妹である。
ロンスヴォーの戦いで戦況が不利になって、ロランが弱気になって角笛を吹くと言ったら、なにをいまさら、とオリヴィエが怒り出す場面がある。その時のオリヴィエのセリフの中で初出(第1720行)。
シャルルがスペイン征討を終えてフランスに戻ったときに迎え出て、ロランの死を知らされると、「ロランのあとに、妾生き残らんことあらざらん!」と叫んで倒れ、そのまま死んでしまう、悲劇の美女。というか、夫や兄に死なれたことより出番がこれだけなのが悲劇

スペイン(サラゴス)

マルシル
サラゴスの王。愛馬ゲニョン。
王のくせに、いきなり弱気である。シャルルの侵攻を受けて、恭順して人質を差し出すことをあっさり覚悟してしまう。それなのに、ガヌロンと通じて策をめぐらすところなどは、なんとも小人物ではある。
戦闘では、強いのか弱いのかはっきりしない。ロンスヴォーの戦いで、シャルル12臣将のひとりルッションのジェラールを討ちとっているが、ロランには右手を切り落とされている。また、シャルルの援軍が到着するとさっさと逃げ出してしまう。
バリガンに援軍を頼んでシャルルを追い払おうと図るが、失敗。サラゴス陥落の直前に落胆して悶死というのはあまりにも情けない。

ブラミモンド
マルシルの妃。オードと並びただ二人の女性登場人物である。
マルシルとガヌロンの陰謀の場で、ガヌロンに頸飾りを与える。なかなか気丈な女性で、マルシルよりも彼女のほうが王に向いていたのではないかと思わせる。
サラゴス陥落の時にはなぜかブラミドワヌという名になっている。サラゴス滅亡の後、死を免れてただ一人フランスに連れ帰られる。フランスでキリスト教に改宗し、ジュリアーヌという名をもらう。

ブランカンドラン
マルシル配下の賢人、ヴァルフォンド城主。シャルルの侵攻におののくマルシルに対し、ただ一人、人質の提供と恭順とを説いて説得する。
マルシルとガヌロンの密議に立ち会ったのち、まったく出てこなくなってしまうのが寂しい。

アルガリフ
マルシルの叔父。ロンスヴォーの戦いではなぜかマルガニスという名になっている。
本来、最初の偽りの恭順のときに人質としてシャルルのもとに赴くはずであったが、途中で船が沈んで溺れ死んだということにして巧みに逃れた。けっこうずる賢い人物なのかと思いきや、ロンスヴォーの戦いではマルシルが遁走した後も戦場に残り、オリヴィエと戦って討ちとられている。

マルガリス
マルシル12臣将のひとり。他の12臣将がロランたちにあっさり倒されていくなかで、ただ一人オリヴィエとわたりあって引き分けた。

グランドワヌ
マルシル配下の武将。愛馬マルモワール。
マルシル12臣将ではないが、活躍の点では12臣将を上回る。ロンスヴォーの戦いの中盤で登場し、シャルル12臣将のうち3人(ジェラン、ジェリエ、ベランジエ)を瞬く間に倒す。が、その後ロランにあっさりと倒されてしまう。

アラビア

バリガン
バビロニア総督。左脇に愛剣プレシユーズを佩き、マルテと称する矛を用いる。
異教徒の総元締め的存在。スペインからシャルルを追い払うため、30に及ぶ軍団を率いて戦う。乱戦の中でシャルルと一騎打ちになり、深手を負わせるが、反撃を受けて殺される。陣立てが派手派手しく手がこんでいたわりには、あっさりやられてしまう感じが否めない。一騎打ちではなかなか強く、決して無能ではないようだが、いかんせん出番が少なすぎて評価に窮する人物である。

ホーム講読ノートロランの歌 [ 重要人物紹介 | 前へ | 次へ ]ページプロパティ
ページの一番上に戻ります。 ひとつ上の階層に戻ります。