フランス文学フローベール|ボヴァリー夫人

ボヴァリー夫人

フローベール [長編小説] Madame Bovary, 1856

翻訳(訳年の新しい順)
編訳者 訳年 注記 文献
太田浩一訳 太田浩一 2025 光文社古典新訳文庫『ボヴァリー夫人』
菅野昭正訳 菅野昭正 2016 抄訳 集英社文庫ヘリテージシリーズ『ポケットマスターピース07 フローベール』 所収
芳川泰久訳 芳川泰久 2015 新潮文庫『ボヴァリー夫人』
山田【ジャク】河出文庫訳 山田【ジャク】 2009 河出文庫『ボヴァリー夫人』
生島遼一訳 生島遼一 1965 新潮文庫『ボヴァリー夫人』
山田【ジャク】中公全集訳 山田【ジャク】 1965 中央公論社『世界の文学15 フロベール』 所収
伊吹武彦訳 伊吹武彦 1939 岩波文庫(全2巻) 上巻 下巻

太田浩一訳『ボヴァリー夫人』刊行に寄せて

2025年11月に、光文社古典新訳文庫からフローベール『ボヴァリー夫人』(太田浩一訳)が刊行されました。
フローベール『感情教育』の太田浩一訳は、すでに2014年に光文社古典新訳文庫で刊行されていますので、これにより『感情教育』と『ボヴァリー夫人』というフローベールの代表的長編二作が、太田浩一訳で出揃ったことになります。

太田浩一先生の翻訳には、フローベールのほかにモーパッサンの短編集やエミール・ガボリオのミステリなどがありますが、いずれも明快・達意の読みやすい訳文として定評があります。各種レビューでも、文学専門外の一般読者から、「ハードルの高そうな作品だと思ったが読んでみたら面白かった」旨の感想がよく聞かれます。訳文の精錬に妥協のない太田先生の姿勢を知る者としては、おおいに納得のいくところです。

太田浩一先生は、当サイトの管理人(朝倉)が二十代の頃にフランス文学史を教わった相手です。学生をフランス文学の世界に招き入れ、自律的な読者となるよう促していく懇切な授業の方針は当時から明確でした。「文学作品の読者の利便に資する」という当サイト(データベース)の基本理念が生まれたのも、その時の授業の楽しさに触発されてのことです。あのとき偶然の巡りあわせで太田先生に出会えたことが、今にして思えば、私にとって無上の幸運でした。

フローベール作品にはこれまでも多くの翻訳がありましたが、太田浩一訳は多くの読者を獲得し、21世紀の新たな現代語訳として定着していくものと確信しています。
世界文学史上でも最重要作品の一つとされる本作を、平易な新訳で再読できる幸せを噛みしめつつ、本書をお薦めします。

2025年11月14日 朝倉秀吾

光文社古典新訳文庫『ボヴァリー夫人』(太田浩一訳)

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