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ニーベルンゲンの歌 |
ゲルマン精神の原点を体現する傑作英雄叙事詩。
Das Nibelungenlied (作者不詳、1200年ごろ)
『ニーベルンゲンの歌(前編・後編)』(相良守峯訳、岩波文庫、1955年)準拠
12-13世紀、ヨーロッパ封建社会の最盛期のドイツでは、確固とした意志や婦人への奉仕を核心とする騎士道精神が開花した。真摯で理想的なゲルマン精神を背景として英雄叙事詩と呼ばれる文学ジャンルが成立し、その最高傑作たる『ニーベルンゲンの歌』(Das Nibelungenlied)が現れる。
『ニーベルンゲンの歌』は、5世紀のフン族の王アッチラのヨーロッパ侵入とブルグント(ブルゴント)王国の滅亡、そしてジークフリート(ジーフリト)伝説とに材をとり、ジークフリートの妻クリームヒルト(クリエムヒルト)の強烈な復讐の意志が貫徹されてゆく悲劇を、全39歌章の緊密な構成をもって力強く描き出す。
「ドイツのイリアス」とも称されるこの傑作叙事詩はゲーテなどロマン派の作家たちに激賞され、ヘッベルの戯曲、ワーグナーの歌劇などを通じて今なお広く知られている。
なお、叙事詩の題名を『ニーベルンゲンの災い』(Der Nibelunge Nôt)とみなす考え方もある。
『ニーベルンゲンの歌』は前編・後編でほぼ半分に分かれ、それぞれが叙事詩として美しい対照をなしている。前編では勇者たちの勲と華々しい宮廷生活が謡われ、これに対する後編では凄惨な復讐と血なまぐさい殺戮が展開する。
ニーデルラントにジーフリトという勇者がおり、ニーベルンゲン国を征服して莫大な富を得ていた。彼はかつて竜を倒した際にその血を全身に浴びたため、首の後ろを除いて不死身の体となっていたのである。
ジーフリトは、ブルゴント国の王グンテルの妹にクリエムヒルトという美しい姫のいることを知り、彼女を得るためにブルゴントに赴く。ジーフリトはグンテルがイースラントの女王プリュンヒルトを娶るための旅に同行して助力を与え、この功績によりクリエムヒルトと結ばれて、彼女をニーデルラントに連れ帰る。
しかしその十年後、招かれて再びブルゴントを訪れたとき、ささいな成り行きからクリエムヒルトがプリュンヒルトを侮辱し、ブルゴントの反感をかう。ブルゴントの勇士ハゲネはプリュンヒルトの仇を討つために、ジーフリトを騙して暗殺する。クリエムヒルトはハゲネを呪い、復讐を誓った。
未亡人となったクリエムヒルトは、数年後、フン族の国の王エッツェルからの求婚に応じてエッツェルのもとへ行く。その真意は、エッツェルの力を利用してブルゴントに復讐を果たすことにあった。それから13年ののち、クリエムヒルトは友好を装ってブルゴントの兄たちをフン族の国へ招待する。クリエムヒルトの意図を疑うハゲネを押し切り、グンテルらは招待に応じてフン族の国へ旅立ち、ハゲネは決死の覚悟で同行する。
旅の道すがらにも武勲をたてながら、ブルゴントの一行はフン族の国の首都エッツェルンブルクへ到着する。表向きの歓迎をよそに、宿敵クリエムヒルトとハゲネとの間には一触即発の緊張が高まる。クリエムヒルト側の襲撃をきっかけにしてついに衝突が起こり、歓待の席は一瞬にして殺戮の場に変わる。激しい戦闘で双方とも数多の勇士が命を落とした。エッツェルの食客となっていたディエトリーヒ王はこの非道な戦いに憤り、みずからグンテルとハゲネを捕らえる。クリエムヒルトは二人の首を刎ね、復讐を果たすが、彼女もまた、ディエトリーヒの腹心ヒルデブラントに誅滅されて命を落とす。
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