政変の相次いだ19世紀の後、フランス第三共和政はようやく安定軌道に乗ったかに見えた。しかし高度資本主義・帝国主義の時代を迎え、国内的には社会経済的な矛盾、国際的には植民地獲得をめぐる列強諸国間の争いが強まり、フランスもまた深刻な政治的・経済的対立状況の中に置かれることとなる。高まる緊張はやがて世界大戦(Guerre mondiale)をもたらし、ヨーロッパ諸国に癒しがたい傷跡を残した。ヨーロッパを震撼させた二度の大戦のなかで、作家たちもまた社会の混乱、人間性の危機の問題に直面させられる。20世紀の作家たちにとっては、世界の不条理に対してどのような態度をとるのかが、避けることのできない基本的な課題となったのである。 戦後、第四共和政(IVe République, 1946)、第五共和政(Ve République, 1958)、五月革命(Révolution de Mai, 1968)と続く政治的混乱を経て、フランスもまた高度消費社会を迎え、思想の空洞化・精神性の枯渇が問われることになる。複雑性と変化のスピードをますます高める現代社会にあって、文学は政治・社会・経済との関わりを無視しては存立し得なくなった。この錯綜した状況に取り組むために、文学もまた隣接する学問・芸術分野との交流を迫られている。 私たちの生きてきた20世紀に、文学はどのような証言を残し得たのだろうか。その真価は、現在と未来の人々によって定められていくことになるはずのものである。 |
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