諸王の冠の言い伝え

暗黒時代とカーカバード

　暗黒時代と呼ばれた数世紀の昔、他からの干渉を寄せつけず独自の歴史を歩んでいた地域のうちのひとつに、闇の大地カーカバードがあった。支配をもくろむ幾多の試みをことごとく拒んできたその地は、やがて各地から集まる邪悪な生き物の棲息する無秩序な地域となり、「さいはての毒虫の巣」とまで呼ばれるようになる。

〈冠〉の発見とフェンフリー同盟

　いっぽう他の地域では、フェンフリーの改革者チャランナによって〈諸王の冠〉が発見されて以来、文明と秩序が拡がっていった。東世界で最大の帝国となったフェンフリーの皇帝チャランナは近隣の国々に〈冠〉を巡回させ、その神秘的な力によって秩序を打ち立て、平和な民族国家を増やしていったのである。持ち主に卓越した指導力と正義感をもたらす魔法の冠を、四年ごとに交替で所有することを許された各国の王たちは、平和のうちに国土を繁栄させて、次々とフェンフリー同盟に参加していった。

〈冠〉の盗難

　ラドルストーン、レンドルランド、ガランタリア、ブライスの各国に続いて冠を受け取ったアナランドでも、〈諸王の冠〉の魔力のもとで目覚ましい繁栄が始まった。だが〈冠〉の統治が始まって二年が経過した黒い月の夜、アナランドから王冠が消失する。カーカバードの支配者となることをもくろむマンパンの大魔法使いが、ザメンの鳥人たちを使って〈冠〉を盗みだしたのだ。

　カーカバードの統一は、フェンフリー同盟にとって大きな脅威が生まれることを意味する。アナランドの王は、〈冠〉の喪失によって臣下や国民のみならず近隣諸国からの信頼をも失い、国の存立さえ危ぶまれる事態に陥った。残されている最後の希望は、すぐれた冒険者が単身でカーカバードを旅し、マンパン砦の大魔法使いから〈諸王の冠〉を奪い返してくることである。この危険な任務に志願したのが、ほかならぬ君であった。

主な用語

暗黒時代	the Dark Ages	今から幾世紀も前の、文明社会が点在していた時代。
カーカバード	Kakhabad	地の果てに横たわる闇の大地。現在まで誰の支配も受けず、統一されたこともない。
ザンズヌ連峰	the Zanzunu Peaks	カーカバード北東部の境界をなす連峰。文明化された土地を追われた生き物がここを越えてカーカバードに入り込んだ。
さいはての毒虫の巣	the Verminpit at Earth End	カーカバードの異称。
諸王の冠	the Crown of Kings	フェンフリーの改革者チャランナによって見出された魔法の冠。所有する者に人間離れした指導力と正義感を与える。
改革者チャランナ	Chalanna the Reformer	〈諸王の冠〉を発見したフェンフリーの改革者。のちフェンフリー皇帝となる。
フェンフリー	Femphrey	チャランナが発見した〈諸王の冠〉の力により、世界の東半分最大の帝国となる。
皇帝	Emperor	フェンフリーの君主。〈諸王の冠〉を発見したチャランナはのちに皇帝となった。
フェンフリー同盟	Femphrey Alliance	フェンフリーから〈諸王の冠〉を受け取った国々からなる秩序と平和に基づいた同盟。
ラドルストーン	Ruddlestone	フェンフリーから〈諸王の冠〉を受け取った一番目の王国。
レンドルランド	Lendleland	フェンフリーから〈諸王の冠〉を受け取った二番目の王国。
ガランタリア	Gallantaria	フェンフリーから〈諸王の冠〉を受け取った三番目の王国。
ブライス	Brice	フェンフリーから〈諸王の冠〉を受け取った四番目の王国。
アナランド	Analand	フェンフリーから〈諸王の冠〉を受け取った五番目の王国。冠を盗まれる。
黒い月の夜	the Black Moon	黒い月の夜は闇夜になる。この機にアナランドから冠が盗まれた。
鳥人	Birdmen	ザメンに棲息する怪物。マンパンの大魔法使いの命令でアナランドから〈諸王の冠〉を盗んだ。
ザメン	Xamen	ザンズヌ連峰山麓に拡がる地域。鳥人たちの棲息地。
マンパン	Manmpang	カーカバード北東部の地域。大魔法使いの砦がある。
バク地方	Baklands	カーカバード中部の荒原。
マンパンの大魔法使い	the Archmage of Mampang	カーカバードの支配をもくろむ魔法使い。マンパン砦を本拠地とし、アナランドから〈諸王の冠〉を盗み出させた。
マンパン砦	the Mampang Fortress	大魔法使いの本拠地。