血の島の地下迷宮攻略データベース|原書に関するメモ

原書に関するメモ

原文についての覚え書き

当コンテンツ作成にあたっては、発売直後の原書(スカラスティック版ペーパーバック第1刷)を利用したが、原文に関して気づいた点をいくつか記しておきたい。

項目73

十分な自信はないが、[項目73]のパラグラフ末尾付近の方角表記が間違っているような気がする。

... see the passageway heading north out of it. Turn to 3. (そこを出てに向かう通路が見える)
 ↓
... see the passageway heading east out of it. Turn to 3. (そこを出てに向かう通路が見える)

そう思う第一の理由は、すぐ次の[項目3]の冒頭で、「地下道はすぐに左に曲がり(turns sharply left)、そのあと右に曲がる(turns sharply right)ので、君は再び東を向いている(You head east again)」という記述があるからである。もともと東を向いていたのでなければ、こうなるはずがない。

迷宮内の方位に関する本作の記述は詳細で、緻密に読み込めば迷宮全体のかなり正確な地図を作成できるようになっている。「特に記述がない限り地下道は直線で、四方位にぴったり沿っている」という厳しめの仮定を置いたとしても、そうなのである。それなのに、この箇所だけがどうしても辻褄が合わない。

「鋭く曲がる(turn sharply)」という表現(本作に頻出)に幅があるともいえるが、これをすべて「直角に曲がる」と一意に解釈したうえでも、やはり全マップが矛盾なく描けることを確認している。緻密なリビングストン氏が、ここだけ断りもなしに曖昧な意味で使っているとは考えにくい。

第二に、明らかにこれと同じ地点で起こっている[項目30]というものがあり、その末尾では「東」となっている。

... see a tunnel heading east out of the cavern. Turn to 3. (洞窟を出て東に向かう地下道が見える)

ある場所の運試しで、吉と出た後の遷移先が[項目73]、凶と出た後の遷移先(の一つ)が[項目30]であり、その両方が[項目3]に遷移して合流するのだから、その意味でも、ここには矛盾があると考えざるを得ない。個人的には[項目73]を「東」と修正して理解することにしている。

項目293、項目319

本書では、各項目末尾の選択肢で、遷移先の項目番号がゴシック体にされて目立つようになっている。しかし[項目293][項目319]でだけは、そうなっていない。

(...) If you want to head west, turn 123. If you want to head east, turn 334.

このことに特別な意味があるとは思えないので、おそらく編集時のミスであろう。なお、二つの項目の描写は同じ地点に関するもので、選択肢を提示する文面は一字一句同じである。編集時のコピー&ペーストによりミスが継承された可能性を想像させる。

項目309

これは誤植の類ではないのだが、面白い発見があった。迷宮内の重要人物である竜使い(Dragonmaster)と初めて会う場面である。

The door opens into a large chamber with a high ceiling where you see a tall figure in hooded robes standing in front of a long wooden table with a heavy oak door behind them. There are two iron doors in the left-hand wall and two in the right-hand wall. On seeing you enter, the hooded figure places both hands on the table and you notice a large gemstone ring on the right forefinger of their gloved hand. You are unable to make out their face as it is hidden by a white face mask. (...) (強調は引用者)

扉を開けると、中は高い天井をもった大きな広間だ。そこには長い木製テーブルを前にして、フード付きローブを着た長身の人物が立っており、その背後には重々しいオーク材の扉がある。左側の壁と右側の壁に、鉄の扉が二つずつついている。君が入ってくるのを見るとすぐに、フードの人物はテーブルの上に両手をつく。手袋をはめたその右手の人差し指に大きな原石の指輪がはめられていることに君は気づく。白い覆面で隠れていてその顔を見分けることはできない。(……)

竜使いは明らかに一人なので(挿画でも一人として描かれている)、一瞬、ここの them とか their に違和感を覚えた(かれらの後ろ? かれらの手? かれらの顔?)。
しかし考えてみたら、顔を隠していて性別が不詳だから、三人称単数として their や them を使っているということなのであろう。

英語圏で三人称単数の they が広まり始めていることは知っていたが、こんなところで出会うとは思わなかった。夢中で遊んでいるだけなのに、けっこう勉強にもなるものである。(ただ、挿画に描かれた竜使いは顔があらかた露出していて、どうやら男に見えるが……。)

項目283

おそらく誤植と思われる。

You conquer you fear and step forward to fight the vile creature ...
 ↓
You conquer your fear and step forward to fight the vile creature ... (君は恐怖を克服して、おぞましい生き物と戦うために進み出る……)

項目326

パラグラフ冒頭の主語は、作者の誤記ではないだろうか。

The Dragonmaster takes a key out from under his robes ...
 ↓
The Gatekeeper takes a key out from under his robes ... (門番はローブの下からカギを取り出し……)

ここは門番(Gatekeeper)と対面している場面であって、竜使い(Dragonmaster)はいない。竜使いと対峙しているときに、似た展開をたどる場面([項目214])があって、文面も一部共通している。その関係で、なんらかのミスが発生したのではないだろうか。

ルール

巻末のルール説明において、戦闘の手順の「6.」と「7.」の内容が重複しており、完全に同文となっている。明らかに編集時のミスであろう。(p.254)

体力点を原点数まで回復する魔法薬について、「Potion of Strength」(力の薬)(p.257)と「Potion of Stamina」(体力の薬)(p.258)という二通りの表記が混在している。

英文の難度

ゲームブックが想定する対象読者の年齢もあってか、本作の英文そのものは格別難しいわけではない。
特に、リビングストン氏の英文は平易で読みやすい印象があり、日本の高校英語の文法に加えて辞書の助けがあれば、なんとか読みこなせそうである。

このあたりが何とかなれば、実戦プレイに堪える程度には理解できるはずである。興味のある方にはお勧めしたい。

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