著者の抱くテーマを集大成した、ロシア文学屈指の大作。
"Братья Карамазовы", 1880
『カラマーゾフの兄弟(上・中・下)』(原卓也訳、新潮文庫、1978年)
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【1】 私はドストエフスキーの長編を、『罪と罰』→『白痴』→『悪霊』と年代順に読んできたが、その次に手を出したのが本書『カラマーゾフの兄弟』である。この作品は、その長さだけでも、他の作品に比べて圧倒的だが、その質、完成度の高さの点においても、ドストエフスキー作品中、というより世界文学史上、群を抜いている。個人的には、私は『白痴』が好きなのだけれど、ドストエフスキーの最高傑作は何かと問われれば、公正にいって、『カラマーゾフの兄弟』を挙げないわけにはいかない。 【2】 ドストエフスキーの作品はみなそうであるが、特にこの作品が追求しようとしているテーマはあまりにも広範で、もはや適切な批評の言葉もない。特に私の印象に残った点だけを挙げておけば、「息子による父親殺し」の事件が扱われるとともに、「子ども」についてかなりの分量の描写がなされていること、そして有名な「イワンの反逆」である。 「彼女が愛しているのは自分の善行で、俺じゃないんだよ」――ドミートリイ(上220ページ) 「でも、だれかが真実を言わなければならないんです……だって、ここではだれも真実を言おうとしないんですもの……」――アレクセイ(上363ページ) 「ええ、リーズ、さっきあなたは質問なさったでしょう、こんなふうに人の心を解剖しているのは、その不幸な人に対する軽蔑があるんじゃないかって。(中略)ああいう質問のうかぶ人は、自分も苦しむことを知っている人ですよ。……」――アレクセイ(上418ページ) 「お前はこの壁の中から出ていっても、俗世間でも修道僧としてありつづけることだろう。大勢の敵を持つことになろうが、ほかならぬ敵たちでさえ、お前を愛するようになるだろうよ。人生はお前に数多くの不幸をもたらすけれど、お前はその不幸によって幸福になり、人生を祝福し、ほかの人々にも祝福させるようになるのだ。……」――ゾシマ(中46ページ) 「行って、人々に告白なさい」わたしは言った。「何もかもやがて過ぎ去り、真実だけが残るのです。……」(中88ページ) |
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