19世紀の経済学者による女性論の先駆。
"The Subjection of Women", 1920
『女性の解放』(大内兵衛・大内節子訳、岩波文庫、1957年)
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【1】 J.S.ミルがその夫人の協力を得て最晩年に残した、男女差別廃止を訴える論文である。原題は『女性の隷従』という。ミルはここで、男女の差別を、国王制を除いては現代まで残存した最後の奴隷制度とまで言って論難している。 ミルの女性解放論も、基本的にかれの主張した自由主義を基本に置いているから、その妥当性、特に理論的な部分のそれについては、自由主義の見直しとともに再検討を余儀なくされるものではあろう。とはいえ、女性のおかれた地位の不合理性についての具体的な主張はもっともであり、十分に受け入れられるものである。 ミルの目標のひとつは女性の普通参政権の実現にあったが、もはや当然のようにそれが実現したこんにちにおいても、ミルが各所でなしている分析は示唆に富むものが多い。結婚して夫に尽くすことが女性の幸せであるとか、女性は一般的に男性より能力が低いとか、うっかりしていると現代でも承認されてしまいそうな主張を、ミルは逐一反駁している。社会不安に乗じていい加減な言説が安易に支持を得つつあるこんにち、冷静に誠実に、説得的な論証を重ねていこうとするミルの態度に学ぶべきところは大きい。 【2】 ミルが同時代の他の思想家に比べて異彩を放つのは、政治・経済・法律といった方面への高い能力だけでなく、人間の心理の矛盾や逆説、不合理性といった方向に対しても感性を開いていたところにあるのだと私は思う。たとえばかれは、自己の利益を追求する功利主義的個人を基本に据えて自分の思想を組み立てながらも、一部の優れた人々は決して功利ではなく高い倫理感や使命感で動くものだということに気づいていたふしがある。 |
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