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コモン・センス

アメリカ独立戦争に影響を与えた政治的宣言書。
Thomas Paine "Common Sense", 1776
トーマス・ペイン『コモン・センス 他三篇』(小松春雄訳岩波文庫1976年)


【1】 言わずと知れた、アメリカ独立に大きな影響を与えた論文である。
 内容的には、やや格調の高い政治宣言といったところで、それほど難解な箇所はない。アメリカの兵士や大衆に訴えかけるための文書であるからべつにそれでも構わなかったのだし、むしろそうであるべきだったのだろう。論旨は平明、アメリカ独立の可能性への力強い確信に満ちた文章は読んでいて気持ちがいいほどである。

【2】 しかし、政治宣言書としての形式にもかかわらず、そこには、いくつか注目すべき洞察がなされているのが見られる。第一に、奴隷制の悪をはっきりと明言し、イギリスの統治が植民地に対する暴政であると同時にインディアン・黒人に対する暴虐でもあることを指摘している点である。独立ののち、実際の奴隷解放までアメリカはなお1世紀近くを待たねばならなかったことを思うと、その先見性は驚嘆に値する。
 第二は、独立時期尚早論に対するペインの反論である。イギリス絶対王政の暴政によって植民地がひとしく損害を被ったその痛みの記憶の生々しいいまほど、独立に適した時期はないことを、かれは理解していた。50年後には、戦争の記憶は薄れ、州相互の間に富の格差が生じ、失うべき財産を手にした有力な州はイギリスとの軍事紛争を躊躇するだろう。そのことをペインは的確に予見し、ほかならぬ今しか独立のチャンスはないことを主張したのである。また、併録された『対話』のなかで述べられている、独立宣言に対してフランスの援助が得られるであろうという見通しも正しかった(1778年フランスはいち早くアメリカを国家承認)。

 ここには、現実の政治情勢に対する、幻想を含まない冷静な判断が働いている。独立を訴える情熱的主張と、独立可能性へのこのような具体的・実際的判断とが、かれのなかで見事に同居し得ていたのである。

ノート
字数:750
初稿:1999/11頃
初掲:1999/12/01
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