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大陸と海洋の起源

プレートテクトニクスの先駆けとなった総合科学の古典。
Alfred Wegener "Die Entstehung der Kontinente und Ozeane", 1929
ヴェーゲナー『大陸と海洋の起源(上・下)』(都城秋穂・紫藤文子訳訳岩波文庫1981年)


【1】 現在の地球表面に散らばる大陸はもともとはひとつであった、とする大陸移動説を主張した古典的作品である。
 大陸移動説は、その後のプレート・テクトニクスの発展によって、現代ではその正しかったことが確認されている。本書の刊行は1929年であるが、ヴェーゲナーの死後も研究はすすんでいるから、現在では、大陸移動についてより詳しく、正確な知識が得られている。従って当然、本書には、そのような最新の研究からみると誤りであるような記述も少なからず含まれており、その意味では、本書には大陸移動説を提唱した古典的意義はあっても、大陸移動に関する現代の専門書というわけではない。
 しかしそれにもかかわらず、私がこの論文を非常に興味深く感じ、また読むに値すると考えるのは、ここには、科学的な真理というものがどのようにして確立されてゆくのか、ということについての一つの見事なモデルが示されていると思うからである。

【2】 本論文のためにヴェーゲナーは、膨大な文献に目を通し、自分と反対の見解(陸橋説・海洋不変説)について地道な検証をひとつひとつ積み重ねてゆく。いっぽう、大陸移動説の見地から地球上の様々な現象がどのように説明されるかを、地球物理学、地質学、古生物学、古気候学といった多様な側面から検討し、論証を深めてゆく。たとえば、アフリカ西海岸と南アメリカの東海岸の地層が連続していることを地質学的に論証してゆく箇所など、門外漢の私でも知的興奮を覚えるくらいだが、同時に、このような論証を導き出すまでの調査・研究作業(実地調査を含めて)に、どれほどの手間と時間と労力が費やされたかを思うと、ただ圧倒されるばかりである。

【3】 科学的な真理とされている認識が、試行錯誤の末に築きあげられた、多くの不確定な要素を含むものであり、決して絶対的・普遍的なものではないということ。と同時に、だからといって、それはいい加減な思いつきのようなものではなく、過去の先人たちの気の遠くなるような地道な努力と失敗の積み重ねの上につけ加えられた新しい一歩にほかならないのだということ。本書の行間に浮かび上がってくる、科学のその等身大の姿は、私たち現代人が抱きがちな、自然科学に対する悪しき過信と悪しき軽視とを戒めてくれるのではないかと、私は思う。
 むしろ自然科学のしろうとの人々に、是非とも薦めたい書である。

ノート
字数:970
初稿:1999/11頃
初掲:1999/12/01
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