具体的な現状認識に基づき解決策を探るすぐれたレポート。
『過労自殺』(岩波新書、1998年)
|
【1】 この本で取りあげられている事件のひとつである電通過労自殺事件については、私も第一審判決の全文を読んだ(判例タイムズ906-163)が、たしかに常軌を逸した労働環境であり、電通側に弁解の余地はほとんどないように思える。 【2】 亡くなった人たちのことを悪く言いたくはないけれど、自殺するほどつらかったのに、会社を辞める、という決断すらできなかったような人のどこが「能力や素質に恵まれている」のだろう。まじめさとは、自分の心を注意深く観察しつづけることへの怠惰と、自分の幸福についての自律的決断が欠如していたこととを、体よく言いかえてごまかしただけではないのか。大切なことの優先順位も判断できなくて、ただ「意欲的」であったりすれば、特定の組織への盲目な忠誠、そしてその組織への殉教ないし心中、という経過をたどって破滅していくであろうことは不思議でもなんでもないのである。 |
|