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重要人物紹介

ニーデルラント

ジーフリト
ニーデルラントの英雄。かつてニーベルンゲンの国を征服し、莫大な財宝をわがものとしている。だが、英雄と呼ばれる男によくありがちなように、人間としてはお粗末である。クリエムヒルトに求婚しにきたブルゴントでいきなり国家征服の挑発をする(第3歌章)など、もはやまともな神経の持ち主とは思われない。とはいえ、たしかに彼は強く、その活躍は比類がない。ハゲネを相手にしてもこれほど強いとすると、やはり全登場人物中で最強と言うほかはなかろう。竜を倒した時にその血を浴びて無敵の体になったが、首の後ろだけには血を浴びなかったため、ここが弱点である。

クリエムヒルト
前編では気品高き美少女、ついで悲劇の若妻、後編では復讐に燃える美しき王妃。ということに普通はなっているが、作品を読めば、それが間違いであることがわかるであろう。実際のところ、中身空っぽの高慢な娘、としか私には思えない。ジーフリトとブルゴントの対立だってもとはといえば彼女の浅はかな自慢話がきっかけであるし、後編の偏執的な復讐願望にもなんら建設的な動機がないわけである。夫の復讐を何十年も企み続けるのは勝手だが、その復讐心の巻き添えになって死んでいく戦士にも妻があるということを忘れているのではなかろうか。

ブルゴント

ブルゴント国人物相関図

グンテル
ブルゴントの王、クリエムヒルトの兄。この人はあんまり強くないのではないかと思われる。というか、はっきり言って弱い。プリュンヒルトを妻に迎えたいと思うが、ジーフリトの力を借りなければ彼女との競技に勝てない。おまけに初夜の床でプリュンヒルトに拒まれて縛り上げられ吊され、作中もっとも滑稽な場面を演じてしまった(王なのに……)。精神的にも毅然たるところがなく、ハゲネのジーフリト暗殺策に懸念を示しながらもずるずると引きずられている。

ギーゼルヘル
クリエムヒルトの弟。若武者と呼ばれる。前編ではあまり活躍の機会がないが、後編ではウォルフハルトと戦って相討ちになっている。彼はジーフリトを失ったクリエムヒルトに、兄弟の中ではただ一人同情を寄せた。一本気な若者であり、本来、復讐されるべきなんのいわれもない。ハゲネに復讐するためにギーゼルヘルをも巻き添えにするしかなかった、というのがクリエムヒルトの言い分であろうが、そんな復讐など許されてたまるものかというものである。

ハゲネ
ジーフリト暗殺の張本人であり、ブルゴント最強の戦士。いちおうこの歌の中での最大の悪人とされているわけであり、卑劣な手段でジーフリトを殺すが、そんな手段を使わなくてもじゅうぶんに強い。ジーフリトが強すぎるのである。後編では破滅を運命づけられながらそれに逆らおうとして奮戦するのであり、けっこう健気である。なんだかんだ言っても、私はハゲネのほうがジーフリトよりも好きである。

フォルケール
ブルゴントの楽人騎士。後編ではハゲネと並んでブルゴントの実働戦力の一翼を担う。交戦の機会が多いためえらく強いかのような印象を受けるが、実際に彼が倒したのはイルンフリトだけである。彼はヒルデブラントに討ち取られる。

エッケワルト
ブルゴントの臣だが、特にクリエムヒルトの直属の配下といった位置づけである。ニーデルラントにもフン族の国にも、クリエムヒルトに随行していく忠義の士。もっとも、復讐の戦いのさなかでは死ななかったようである。

プリュンヒルト
イースラントの女王。非常に美しいのだが、求婚者が現れると投槍・投石・幅跳びの三種目で自分と競技することを求め、ひとつでも彼女に負けると殺されてしまう。前編ではこの人が最も魅力的であると私は思う。ジーフリトのインチキにかかってグンテルの妻になってしまい、挙げ句はクリエムヒルトに侮辱されるという悲しい運命をたどる。後編にはちっとも出てこない。

ニーベルンゲン

アルプリーヒ
ニーベルンゲンの国の侏儒。こびと、という割にはやたらと強い。むしろ体格のいいドワーフのようなものを念頭に置くべきなのであろう。第8歌章でジーフリトと戦うが、髭を掴まれてグイグイ引っ張られ、痛さのあまり降参。そんな戦い方は反則だよなあ、と読者としてはねぎらってやりたくなるが、本人はあっさりとジーフリトに従ってしまう。

フン族の国

フン族の国人物相関図

エッツェル
フン族の国の王。とはいえ、なんとなく印象の薄い人物である。クリエムヒルトとの結婚からして使者をやって迎えたというのであって、ジーフリトのような英雄的活躍がないからでもあろうし、また最後まで自分で剣をとって戦わなかったからでもあろう。しかしクリエムヒルトのことは愛しており、ブルゴント勢のことも純粋に客としてもてなしている。こんな復讐劇に巻き込まれなければ、平和を愛する気のいいおじさんとして幸せに暮らせたであろうのに。

リュエデゲール
ベッヒェラーレンの辺境伯。この凄惨な殺し合いの歌の中で、ひとつの大きな救いになっている高潔の士である。彼はエッツェル王に忠誠を誓っているが、ブルゴント勢がフン族の国を訪れる旅路で彼らをもてなして親交を結んでもいる。あまつさえブルゴントのギーゼルヘルとリュエデゲールの娘は婚約までしているのである。両者が戦闘状態に入ったとき、彼は戦うべきか否か悩む。二つの価値の間で揺れ動き苦悩する彼の姿は、クリエムヒルトやハゲネよりもずっと、現代人の姿に近い。

ディエトリーヒ
東ゴート族の大王、テオドリヒ。このときはエッツェル王のもとに身を寄せていた。
彼は最後の最後になるまで戦場に出てこないが、その強さには比類がない。相手が疲労していたとはいえ、グンテルとハゲネを生け捕りにしたのは彼である。彼はもともとクリエムヒルトの復讐には反対で、ハゲネらに対して警告を与えていた(第28歌章)。クリエムヒルトも彼に対しては畏怖の念を抱き、復讐心を咎められて羞恥を感じている(詩節1749)。彼が戦わねばならなかったのは、ブルゴントによって部下が皆殺しにされたからであった。

ヒルデブラント
ディエトリーヒの臣下にして剣の師匠である老将。もうこれだけで貫禄十分であり、非常においしい役どころと言えるであろう。彼は第38歌章においてフォルケールを討ち取るという手柄をあげている。ハゲネとも交戦するが、老いのためか、さすがに不利は拭えない。しかしそれでも彼の魅力が減じるとは思われない。加えて、復讐を達成したクリエムヒルトの残酷さを憂えて最後に彼女を斬る役割を果たしており、見せ所じゅうぶんの人物である。

ブレーデリーン
エッツェルの弟。ヌオドゥンクの嫁であった美しい娘をもらえるとクリエムヒルトに約束されて目がくらみ、ハゲネらを討ち取ることを承諾する。だが、彼のたくらみはブルゴント側に内報されており、あっという間にダンクワルトに討ち取られてしまう。両陣営の戦端を開くきっかけとなった以外には、ほとんど見せ場のない人物である。

イーリンク
エッツェルの下に身を寄せているデンマルク王ハーワルトの臣下の勇士。名剣ワスケンを用いる。
この男は強い。ワスケンの剣のおかげもあるかもしれないが、ハゲネに匹敵する勇者である。しかし、移り気なのが欠点であった。ハゲネに襲いかかり、簡単に倒せないとわかるとフォルケールに矛先を変える。これも討ち取れないとみると、すぐにグンテルのほうへ行き、またすぐにゲールノートに乗り換える。その後無名の戦士を四人ほど倒すものの、ギーゼルヘルの憤激をかって頭を強打され、気を失う。死んだように見えたが実は無傷で、「狂気のように跳び起きて」逃げ出すが、そこでハゲネと出くわしてまた交戦。そしてハゲネに手傷を負わせるという快挙を成し遂げる。しかしとどめを刺すことはできず、再びハゲネに挑発されて戦いを挑み、今度はやられてしまう。
最初から誰かひとりに絞って戦えば、勇者のひとりふたりは討ち取れたかもしれないのに……。

リュエデゲールの娘
リュエデゲールの娘というだけで実名が明らかでないが、この人が『ニーベルンゲンの歌』のヒロインである。
え? とかいう顔をしないこと。この点に関しては異議を認めない。後編にはいり、クリエムヒルトが復讐鬼になって魅力を失い、プリュンヒルトもさっぱり出てこなくなってしまうと、魅力的な女性はもうこの人しかいないのである。若武者ギーゼルヘルの婚約者でもあり、ヒロインとしての資格はじゅうぶんあると言うべきである。
なお、彼女はブルゴント最強の勇者、忠義の士ハゲネを見て、次のような感想を抱いた。「彼女は彼の顔を見たが、接吻などはやめておきたいほど怖い男に思われた」(詩節1665)。

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