Staël, Madame de (1766-1817) 19世紀の小説家。パリ生まれ、フランス革命直前の首相ネッケルの娘。スタール=ホルスタイン男爵と結婚するがまもなく離婚。若い頃からルソーを崇拝し、サロンの主宰者として活躍、バンジャマン・コンスタンとの恋愛関係が有名。ゲーテやシラーなどドイツ文学の紹介を通じて、風土と結びついた趣味や文学の多様性・相対性を説き、ロマン主義に影響を与えた。革命時代には追放されてスイスに亡命、反ナポレオン陣営の有力者となるが、ナポレオン没落後はパリに戻った。女権拡張論者の嚆矢としても知られる。
Chateaubriand, François-René de (1768-1848) 19世紀の小説家。貴族の息子としてサン=マロに生まれる。アメリカで冒険生活を送り当初は革命にも好意的であったが、ルイ16世の処刑を機に反革命に転じ、王政復古期のフランス外相として政治的に活躍した。30歳ごろキリスト教に復帰し、護教論的大作『キリスト教精髄』において、趣味を洗練させるという見地からキリスト教を称揚する芸術的宗教観を展開する。その文体は華麗で諧調に富み、自然の礼賛、宗教的敬虔さや自我の解放を謳ってロマン主義の先駆をなした。
Lamartine, Alphonse de (1790-1869) 19世紀の詩人、ロマン派四大詩人のひとり。ブルゴーニュのマコンで貴族の息子に生まれる。26歳のときの人妻ジュリーとの恋愛経験を、最初のロマン派叙情詩と言われる『瞑想詩集』(1820年)に結実させ、ロマン主義の先駆的存在となった。内的な心情の流露した華麗で叙情的な文体を特徴とする。王政復古期から二月革命期にかけては外交官・政治家としても活躍するも後に失脚、晩年は失意と貧窮のうちに過ごした。
Vigny, Alfred de (1797-1863) 19世紀の詩人・小説家。ロッシュの貴族の子に生まれ、近衛騎兵陸軍少尉を経てロマン派の詩人となり四大詩人のひとりに数えられる。一派のなかでも先駆者的な位置を占め、内心の体験を反映した情熱と隠者的な自制心とが均衡した詩を書いた。「詩は感動の結晶」というその言葉はロマン主義の文学観を代表するものとされるが、ロマン主義の最盛期には運動に幻滅して身を引き、孤高の人として叙事詩的小説を書きつづけた。晩年は隠棲して詩作にふけり、「象牙の塔の隠者」と呼ばれる。
Balzac, Honoré de (1799-1850) 19世紀の小説家。トゥールの中流家庭に生まれ、法律事務所見習いから作家となる。30歳のときの最初の成功作『ふくろう党』以降19年間で伝説的な多作ぶりを発揮し、51歳で過労のため死去するまでに90作以上におよぶ小説を残す。王政復古・七月王政期を舞台にした多数の社会誌的小説を「人間喜劇」の総題のもとに構成し、「戸籍簿と張り合う」かのように社会環境を総体的に分析・研究しつづけた。金銭欲・権力欲に捕らわれた怪物的人間を扱い、特にブルジョワの写実的描写にすぐれる。
Hugo, Victor (1802-1885) 19世紀の詩人・小説家。ブザンソン生まれ。ロマン主義運動の中心人物であり四大詩人の一角をなす。若くして詩才を現して神童と称され、1830年エルナニ事件を契機にロマン派の指導者となった。幼なじみアデールと結婚するも友人サント=ブーヴとの三角関係に悩む。豊かな想像力と絵画的イメージに富んだ詩を数多く残し、ロマン派のなかでもとくに詩法を重視した。人道主義者としても知られ、第二帝政期は各地を亡命、晩年になってようやく帰国した。
Musset, Alfred de (1810-1857) 19世紀の詩人・小説家・劇作家。ロマン派四大詩人のひとり。政府高官の子としてパリに生まれる。17歳でユゴーのセナークルに入り天才児ともてはやされるが、22歳から二年間続いたジョルジュ・サンドとの恋愛とその破局によって詩才を成熟させる。のちにロマン主義の極端な抒情を離れ透徹した自己の内面分析へ向かうものの、放蕩生活のため46歳で早世。ロマン派の中でも戯曲の才能は最高とされ、傑作『ロレンザッチョ』のほか、読者のみを対象とした「安楽椅子で見る芝居」を多く残した。
Baudelaire, Charles (1821-1867) 19世紀最高の詩人。パリに生まれ孤独な少年時代を送る。美術批評やエドガー・ポーの翻訳から詩人に転じ、ベルトランなどの影響を受けて散文詩を創作。1857年の詩集『悪の華』は風俗壊乱罪に問われるが、古典的なアレクサンドランの形式をとりながら内的な感覚世界を暗喩によって描写したその詩はユゴーにも絶賛され、象徴派の先駆をなした。混血女性ジャンヌ・デュヴァル、才女サバチエ夫人、女優マリー・ドーブランなどと愛人関係を結ぶ。46歳でベルギーを講演旅行中に倒れ、その生涯を閉じた。
Verlaine, Paul (1844-1896) 19世紀の詩人、メッツ生まれ。高踏派の影響を受けて詩作に入る。中流階級の娘マチルドとの結婚は長続きせず、10歳年下の若い詩人ランボーと同棲し放浪の生活を送る。1873年に酔って発砲事件を起こしたことからランボーと別れ、以後貧窮のうちに詩作を続けた。その詩には享楽者としての頽廃と悪徳の告白と、その反面としての愛のよろこびと回心の熱狂とがせめぎ合っている。晩年は施療院で暮らし、孤独な死を遂げた。
Rimbaud, Arthur (1854-1891) 19世紀の詩人。シャルルヴィル生まれ。幼少時より神童の評判を得て詩作を志し、バカロレアを放棄してパリに家出、17歳でパリ・コミューンに共鳴する。その後10歳年上の詩人ヴェルレーヌとの同棲関係に入り、2年後の発砲事件まで懶惰な生活を続けた。「見者」と自己規定して『地獄の季節』『イリュミナシオン』などの斬新な詩を書き、シュルレアリスムの先駆のひとりとも見なされうる。21歳で詩作を放棄して貿易商となり、マルセイユで癌により死去。